冬のエアコン商戦が始まった。この数年、〝激戦区〟として注目されるのが北海道や東北地方だ。灯油を使うヒーターが主流の寒冷地に向けて、家電各社は外気温がマイナス10度や20度を超えても室内がしっかりと暖まる高機能モデルを相次いで投入している。新型コロナウイルス禍で在宅時間が増えたことや原油高も追い風となっている。
国内の家庭用エアコン市場のうち、寒冷地向けは2~3%だが、この数年は2ケタ成長が続く。内閣府によると、寒冷地の家庭用エアコン普及率は7割に届かず、全国の約9割と比べ成長余地が大きい。
かつて「エアコンの暖房機能が効かない」とされてきた豪雪地帯が激戦区となったのには、いくつかの理由がある。
一つは空気中の熱を集めて室内を暖めるヒートポンプ暖房能力の向上だ。さらに室外機にヒーターを入れて除霜時間を短くするなどの工夫を重ねたことで、寒冷地の消費者も暖房器具としてのエアコンに目を向けるようになった。寒冷地で夏場に猛暑を観測するようになったことも、冷暖房両方に使えるエアコン需要を押し上げている。
灯油価格高騰も省エネ性能が高い家庭用エアコン市場には追い風だ。「スゴ暖」シリーズを展開するダイキン工業の担当者は「今後はエアコンの省エネ性、光熱費の低さをさらに積極的に訴求しやすい環境になりそうだ」と期待する。
三菱電機は5月、「ズバ暖」シリーズの新製品を投入。赤外線センサーで室内環境を把握し人工知能(AI)で運転を制御する機能を強化した。担当者は「在宅時間が増えたことで、部屋の空気をきれいにする機能にも注目が集まっている」という。
富士通ゼネラルは寒冷地モデル「ゴク暖」シリーズを温室効果ガス削減効果の高い製品として今年から全国展開。斎藤悦郎社長は「灯油文化が残る日本でも、今後はエアコンへの置き換えがかなり進むのではないか」と語る。
家電をめぐっては、世界的な半導体不足が影を落としている。各社は調達先の多角化や設計変更などの工夫を重ね、難局を乗り越えようとしている。(米沢文)