日本消費者連盟などでつくる市民団体「香害をなくす連絡会」は令和元年12月~2年3月、被害の実態についてアンケートを実施。それによると、回答者約9030人のうち、7136人が「柔軟剤や香り付き合成洗剤で体調を崩したことがある」と答えた。うち約2割(1277人)が「仕事を休んだり職を失ったり、学校にいけなくなったことがある」と回答した。
症状別(複数回答)では、頭痛(67・4%)や吐き気(63・9%)が多く、状況としては乗り物や店舗で発症した人が目立った。
一方、7割近い人が「香りから離れると改善する」と回答。確かに香りを避けることが一番の対策になるが、学校や職場で香害の理解を得るのは難しい。
「派遣先で柔軟剤のにおいの強い人がいて体調を崩した。上司に相談したが、個人的な問題なので注意できないと言われた」(埼玉県の50代女性)。「柔軟剤の使用を控えるよう会社にお願いすると、退職勧告書類を送りつけられた」(静岡県の40代男性)。こうした悲痛な声も寄せられた。
隠れた患者も
香害は化学物質過敏症の一種。生活の中で触れる化学物質の量が限界を超えると、症状が出る仕組みだ。
典子エンジェルクリニック(堺市北区)の舩越典子院長は今年10月、「香害外来」を開設。瞳孔や眼球の動き、平衡感覚などを測定して定量的な診断ができる体制を整えた。「昨日まで大丈夫だった人も、限界を超えたら突然発症する。誰にとっても人ごとではない」と訴える。
実は舩越院長自身も、数年前から香害に苦しんでいる。「自分がなってみて初めて詳しく知るようになった」と明かすように、医師の間でも香害が広く認知されているとは言い難い。
産婦人科医として長年の診療経験がある舩越院長。「原因不明の体調不良で皮膚科や産婦人科に通っている人も、実は香りが原因ということもある」と述べ、隠れた患者の存在を指摘する。その上で「自分が分からないうちに出している香りで、他の人を苦しめている可能性があると多くの人に気付いてほしい」と理解を求めた。(花輪理徳)