柔軟剤や洗剤で体に異変 知られざる「香害」の実態

香害に苦しむ親子を問診する舩越典子医師(中央奥)=11月10日、堺市
香害に苦しむ親子を問診する舩越典子医師(中央奥)=11月10日、堺市

柔軟剤や制汗剤の芳しい香りが、ある日を境に頭痛や吐き気の原因に―。そんな化学物質過敏症の一種、「香害(こうがい)」に苦しむ人が増えている。新型コロナウイルス下で定着した消毒液のにおいでも症状が出るといい、事態は深刻だ。中には仕事を辞めたり、職場に被害を訴えたことでハラスメントに直面したりするケースもある。関西のクリニックでは10月、香害を専門とする外来が開設された。被害の全容は把握できておらず、担当する医師は「誰もが発症する可能性を持っている。社会の理解を広げることが重要だ」と意義を強調する。

長男も発症

2年前の朝だった。関西地方に住む40代の女性は長男(8)を送り出すため、幼稚園バスの集合場所に向かった。いつもの光景だったが、異変は突如として起きた。

鼻を突くような柔軟剤のにおい―。その瞬間、激しい頭痛に襲われた。何とか帰宅したが、体調は3日間も戻らなかった。

「更年期かな」。そう考えた女性は、複数の病院を回って検査を受けた。しかし原因は分からなかった。時間の経過とともに症状は悪化。やがて、あめ玉が胸に詰まったような苦しみを感じるようになった。

香害専門外来を開設した舩越典子医師=11月10日、堺市
香害専門外来を開設した舩越典子医師=11月10日、堺市

原因が香りだと自覚した後も、第三者の理解を得ることは難しかった。夫には「何が匂うねん」となじられ、パートは辞めざるを得なかった。

その後、小学校に入学した長男にも同じ症状が出始めた。《お願いがございます》。手作りのプリントで同級生の保護者に向け、香りの強い柔軟剤の使用を控えるよう依頼した。だがそれ以降も、長男の持ち物からはクラスメートらの持ち物から移った柔軟剤や洗剤の香りを感じた。

女性は切実に訴える。「自分にとっては、何も感じない香りでも、苦しむ人がいるという事実を知ってほしい」。

得られぬ理解

香害に苦しむ人はどのくらいいるのか。