岸田文雄首相の看板政策実現のための政府の会議が次々と発足し、具体化に向けた議論が始まっている。主軸となる「新しい資本主義実現会議」が先月下旬に初会合を開いたほか、今月に入り4つの会議が相次いで立ち上がった。首相としては来夏の参院選までに政策で着実に結果を出したい考えだが、会議が乱立気味との指摘もあり、今後は「スクラップ・アンド・ビルド」も焦点となりそうだ。
首相が就任後に立ち上げたのは、新しい資本主義実現会議▽デジタル田園都市国家構想実現会議▽デジタル臨時行政調査会(臨調)▽全世代型社会保障構築会議▽公的価格評価検討委員会-の5つの会議。議論するのは、いずれも首相が就任前から温めてきた看板政策だ。
新しい資本主義実現会議は、首相が先の党総裁選に向けて練り上げてきた「成長と分配の好循環」の具体化を目指す。デジタル田園都市国家構想実現会議は、デジタル化による都市と地方の格差是正が狙いだが、宏池会(現岸田派)会長を務めた大平正芳元首相が地域間格差の是正を目的に掲げた「田園都市構想」から着想を得ており、首相のかねての持論でもある。
首相はこれらの会議で議論を進め、政策を着実に積み上げたい意向だ。ただ、岸田政権で新たに設置された会議は、既存の会議と役割が似通う部分が少なくない。例えば、デジタル臨調と規制改革推進会議はいずれも規制改革を取り扱う。そもそも、首相は総裁選の際、規制改革推進会議を改組し、デジタル臨調をつくると訴えていた。首相周辺は「これまでの会議を全てなくすというわけではなく、使えるものは使うということだ」と解説する。
政府の会議の林立は岸田政権に始まったことではなく、安倍晋三政権時代などにも指摘された長年の課題だ。首相は党政調会長時代に政調改革に取り組み、調査会や特命委員会などの組織を111から89に統合するなど組織の「スクラップ・アンド・ビルド」の経験がある。
首相は既に1億総活躍や働き方改革、人生100年時代など安倍政権の看板政策を推進した内閣官房の4室を廃止。「岸田カラー」を打ち出すための布石も打ち始めており、今後、組織再編の手腕も問われることになる。(永原慎吾)