急拡大する動画配信 アマゾン・スタジオ責任者に聞く

「ザ・マスクド・シンガー」で司会を務める大泉洋さん(左)と、歌を披露する出演者の「バード」©2021 Amazon Content Services LLC
「ザ・マスクド・シンガー」で司会を務める大泉洋さん(左)と、歌を披露する出演者の「バード」©2021 Amazon Content Services LLC

定額制(サブスクリプション)動画配信サービス市場の急成長が続いている。米国発のAmazonプライム・ビデオ(アマプラ)やネットフリックスなど各サービスが独自制作番組を拡充しているが、中でも存在感を高めているのは海外の人気番組を日本向けにローカライズ(現地化)した番組だ。こうした現状や戦略を、番組制作などを手掛ける「アマゾン・スタジオ」アジア太平洋地域責任者、エリカ・ノースさんに聞いた。

「日本の番組は創造的でとても楽しく、エネルギーに満ちています。他にないような力強いコンテンツを日本で作り、世界に広げることが私たちの目標です」

日本の新聞メディアからのインタビューは初めてとなるノースさんは、日本市場の魅力と目標をこう語った。

アマプラで話題のオリジナル作品といえば、9月に配信が始まり、現在も人気の歌番組「ザ・マスクド・シンガー」。大物歌手、俳優らがマスクをして歌を披露するが、正体を見破るのは意外と難しい。家族や友人と推理を楽しめるのがミソだ。2015(平成27)年に韓国で始まり、4年後に米国で大幅にリメーク。全米トップの視聴率を誇る番組となり、現在は世界50カ国で現地制作される番組に成長した。

特徴は、昨今のテレビ番組ではあまり見かけなくなった豪華さにある。衣装からセット、演出に至るまで全てがきらびやかで、劇場でショーを見ているかのよう。日本版では侍や忍者を意識した衣装を使うなど、「日本らしさ」にも力を入れる。ノースさんは「スケールの大きさ、刺激的な内容、推理の面白さ…。(従来の)日本のテレビでは見られないものだと感じた」と太鼓判を押す。

その一方で、日本発の番組が世界で人気を博している例もある。その代表が、お笑い芸人の松本人志さんが企画した「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル」。お笑い芸人たちが笑いの真剣勝負に挑む番組で、来月にはシーズン10が始まる。

現在はメキシコや豪州、インドなど世界で現地版が作られ、各地のスターが出演。特にイタリアとドイツでは「国民的人気番組になった」(広報)という。

このほか、有力コンテンツとして期待を寄せているのがアニメだ。アマプラでは8月、人気シリーズの映画完結作「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(庵野秀明総監督)を独占配信し話題になった。「アニメは世界的にも最も求められるカテゴリーの一つ。世界同時配信は大きな成功になりました。日本には多くの人気作があり、今後大きなチャンスを生むと思います」

ノースさんはクリエーター支援にも言及し、「日本のクリエーター(作り手)に大きな機会を提供し、彼らが『こんなことができるとは夢にも思わなかった』と思うことを実現したい。カメラの後ろにいる方々にも門戸を広げていきたい」と呼びかけた。

定額制動画配信サービスは、月単位などの定額料金を支払うことで、映画やドラマ、アニメなどを期間中何度でも視聴できる仕組みのことだ。利用にはインターネットが必要で、スマートフォンやタブレット、ネット対応のテレビなどで見られる。アマプラ、ネットフリックスという〝黒船〟が平成27年に日本上陸を果たしてから6年。国内市場規模は、今も急成長を続ける。

エンタメ業界のマーケティングデータ分析などを行う「ジェムパートナーズ」(東京)の調査によると、27年には同サービスの利用率は調査対象者の8・9%だったが、30年にテレビの有料放送を上回り、昨年には30・3%にまで上昇。急速に存在感を増している。

昨年の同サービスの国内市場推計規模は、前年比846億円増の3238億円。同社は令和7年には昨年の1・7倍に当たる5663億円に到達する可能性があると試算する。

(本間英士)