大相撲九州場所9日目は22日、今場所3日目に37歳になった玉鷲が年齢を感じさせない力強い相撲をみせた。英乃海を一方的に押し出し、2場所ぶりの勝ち越しへリーチ。連敗を阻止し、「きのうはだらだらして自分の悪いところが出たけど、きょうは勝負を早く決められた」と笑った。
持ち味が凝縮された一番だった。立って勢い良く前へ踏み込む。左手を相手の右脇に当て、右手はのど輪で一気に土俵外へ運んだ。電車道の表現がぴったりの内容に、錦戸審判長(元関脇水戸泉)は「いい相撲だった。押し相撲の見本のようだ」とうなった。
平成16年初場所の初土俵から17年に及ぶ現役生活で数々の勲章を積み上げてきた。通算勝利数704は現役最多で、31年初場所では賜杯も手にしている。何より誇れるのは、豊富な稽古量で初土俵から一日も休場のない頑健な心身を作り上げたことかもしれない。
同じモンゴルからやってきて史上最多の優勝45回を記録した横綱白鵬でさえ、肉体の衰えを理由に36歳で迎えた先場所後に引退した。番付が大きく異なるので単純に比較はできないものの、白鵬より4カ月ほど早く生まれたとは思えない若さあふれる取り口には驚かされる。
31年初場所は横綱稀勢の里が場所中に引退を決断し、今場所は白鵬が引退して初めての場所となる。「いい相撲を取ってお客さんを喜ばせたい」。期待を一身に集めた日本出身横綱が去った場所に続き、記録尽くめの大横綱が去った直後の土俵も懸命に盛り上げている。(奥山次郎)