安全保障上重要な土地の利用などを調査、規制する「重要土地利用規制法」が来年秋の全面施行される。だが、施行を前に不動産の駆け込み購入や、出資者が分かりにくい合同会社が太陽光発電事業を引き継ぐなどし、買収側の素顔が見えない不動産取引が顕著になっているという。外国資本の参入も多く、現場では国境のハードルも揺らぎつつある。
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除された後の10月上旬、中国地方の山林を切り崩し造成を進める太陽光発電所の建設現場を訪ねた。山肌がむき出しで、地元住民によると、開発面積は100ヘクタールを超えるという。登記簿上は何の変哲もない通常の売買取引が行われているが、地元で話を聞くと、登記簿に記載のない法人名が複数飛び交うのだ。
しかも、開発工事は6年前、経済産業相から太陽光発電事業の設備認定を受けた合同会社が取り仕切っているが、この合同会社の本店所在地と代表社員、職務執行者がそれぞれ3回変遷し、9月には突如、中国大手企業のA社が参入することが明らかになった。