古典個展

高所得者負担増の愚策 大阪大名誉教授・加地伸行

大阪大名誉教授の加地伸行氏
大阪大名誉教授の加地伸行氏

衆議院選挙が終わった。好むと好まざるとに拘(かか)わらず、その結果に基づく政治に次回総選挙まで従ってゆくのが、民主主義国家のありかたである。ここが独裁国家、例えば中国との決定的相違だ。

その日本だからこそ、言論の自由が認められている。ただし個人に対しての誹謗(ひぼう)中傷を許しているわけではない。

ところが、ネットの世界ではそうした誹謗中傷が横行している。老生は時代遅れであり、スマートフォンをはじめ、IT関連の世界とは全く無縁であるので、その実態について知らなかったが、友人にネット上の一例を見せてもらって驚いた。

いやもう最低の悪口の羅列。聞けば、そのような罵声を浴び、気の毒にも自殺した人がいたという。しかも、その罵声発言は無署名で姿は見えない。

おかしい。言論の自由が認められている日本なればこそ、国民的いや国家的問題であれば堂々と署名し批判すべきだ。

他者を批判するときは署名し、論理的に批判するのが筋である。感情的であってはならない。感情的になると、結局は誹謗中傷になる。

そこで、先の総選挙における立憲民主党の主張に対して、庶民の一人として素直な批判を加えてみたい。

枝野幸男前代表は、年収1千万円未満世帯に対する1年間の所得税実質ゼロ、また低所得者への12万円の現金給付を行い…と述べていた。

しかし、合算すればその総額がいくらになるのか、明示していない。それでは議論しようにも数字がないので、具体性がない。恐らくは巨額になるであろうその費用をいったいどこから調達するというのであろうか。

枝野氏はこう言っている。すなわち高額所得者(恐らく1千万円以上の所得者)から調達すると。

これは、共産主義化への第一歩である。資産の剝奪から始めるという方法を使ってきたのは歴史が示すところだ。

なんのことはない。経済に無能な者による専制政治への道である。しかも、そのようにして進めた共産主義的な国家が行き詰まり、悲惨な生活となり、解体していったことを、われわれは何度見たことであろうか。

さらに突っ込んで言えば、高額所得者は、健康保険料の負担も住民税も高額である。それはどうなるのか。減額するというのか。すると、その赤字分を誰が補うのか。減額しないとすれば、高額所得者の負担がさらに増えよう。

こんな単純な引き算・足し算をするだけで、この政策がチャチと分かる。老生は難しい数学を使ってあれこれ言う現代経済学は知らない。しかし、引き算・足し算ぐらいはできるぞよ。

もっとも、政権与党も公明党の公約に引きずられる形で、給付金などの〝バラまき〟をやるというのだから、国民は注視する必要があるだろう。

『国語』周語上(しゅうごじょう)に曰(いわ)く、民の口(批判)を防ぐは、川〔の暴流〕を防ぐより甚だし(困難である)と。(かじ のぶゆき)