ビジネスパーソンの必読書

情報工場「SERENDIP」編集部

プロ野球界に復帰した新庄剛志氏。球団が彼を招聘(しょうへい)したのは、客寄せではなく、その真の資質に期待したからだろう。本質を見抜いた決断を見習いたい。

インフラ危機

□『山小屋クライシス 国立公園の未来に向けて』吉田智彦著(ヤマケイ新書)

登山者の憩いの場となるだけでなく、環境保全や人命救助など多様な役割を担う「山小屋」。重要インフラといえるが、存続の危機に瀕(ひん)しているという。

危機が認識されるきっかけの一つが、令和元年の「ヘリコプター問題」だ。当時、山小屋への物資運搬をほぼ独占的に請け負っていた東邦航空のヘリコプターが故障し、多くの山小屋が開業延期を余儀なくされるなどの影響を受けた。そして、こうした重大な問題に直面した山小屋を公的に支える仕組みや法律が存在しないことが露呈した。

山小屋には平地の宿泊所と同じ建築基準法や消防法、旅館業法などが適用され、山地の特殊事情が考慮されない。そのため、修繕の際に、規制をクリアするのに無駄なコストがかかる。さらに、登山人口の減少で経営困難に陥る山小屋も目立つ。

山小屋を襲う危機を救うには、公と民が連携した合理的な取り組みが必要なのではないだろうか。

アマゾン退ける

□『INNOVATION STACK だれにも真似できないビジネスを創る』ジム・マッケルビー著、山形浩生訳(東洋館出版社)

米国発モバイル決済のスタートアップ企業「スクエア」の共同創業者が、同社の強みである「イノベーションスタック」を語る。

スクエアは2009(平成21)年にスマートフォンに挿して使う極小のクレジットカードリーダーを開発、それまでカード決済を導入できなかった小規模店舗を中心に、新たな市場を切り開いた。

この決済システムには加盟料無料、端末代金不要、単純な料金体系、電話サポートなしといった複数の「発明」があった。これらは互いに関係し、一つでも欠けると全体が成立しない。こうした発明の統合体がイノベーションスタックだ。

複雑に絡み合う多数の要素は、簡単にはまねられない。2014(同26)年にアマゾンが始めた類似決済サービスが1年強で撤退したのも、スクエアがこの統合体に守られているおかげだ。多様なメンバーが欠点を補い合うチームワークにも似ている。「関係性」こそが、あらゆるものの強さの秘訣(ひけつ)なのだろう。

投資家マインドを

□『サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える』村上誠典著(祥伝社)

宇宙科学研究所(現JAXA)からゴールドマン・サックスを経た投資家が、持続可能な社会を実現するための新しい資本主義について論じる。持続可能な社会づくりの主体は投資家ではなく消費者。しかも「投資家マインドを持った考える消費者」であるべきだという。

従来の消費者はキャベツの価格が900円であれば、たとえ無農薬で美味であっても「高すぎる」として買わない。しかし「考える消費者」であれば、高くてもより安全な無農薬の野菜を選ぶ。そうした消費行動が繰り返されれば、世界中から農薬がなくなる可能性もゼロではなくなる。

米EV(電気自動車)大手テスラは、初期の、同社の未来を信じる少数の消費者のおかげで成長できたのだという。テスラの製品を選んだ消費者は、投資家マインドを持っていた。

新しい資本主義を作るのは企業ではない。私たち消費者一人一人の「選択」に他ならないのだ。