新たな危機を迎えたハッブル宇宙望遠鏡は、完全復活を果たせるか

乗り越えてきたトラブル

ハッブルはこれまでの長く生産的な運用期間の間、はるか彼方の銀河から近傍の星の誕生と死まであらゆるものを記録してきた。そしてその間、さまざまなトラブルに見舞われてきた。

打ち上げはベルリンの壁が崩壊した数カ月後の1990年で、スペースシャトル「ディスカバリー」によるものだ。現在は地球の約340マイル(約545km)上空を周回している。打ち上げ後、NASAのスペースシャトルに搭乗した宇宙飛行士が5回にわたりシステムの修理やアップグレードをするサービスミッションを実施し、当初は10年程度が見込まれていたこの宇宙望遠鏡の寿命を大幅に延ばした。

09年5月にはスペースシャトル「アトランティス」に搭乗した宇宙飛行士が分光器などを修理し、それが最後のサービスミッションとなっている。それ以降の再起動はすべて地球上からのもので、エンジニアがハッブルのハードウェアを交換することはできなくなっている。

ハッブルの現在の不具合は前例がないわけではない。実際、今回の不具合は今年に入って2度目だ。7月には科学観測機器の調整と監視をするペイロード・コンピューターがオフラインになり、エンジニアは望遠鏡の機器を約1カ月にわたってセーフモードに変更した。その後、バックアップ電源の使用を開始したところ、動作を再開できた。

ジェレティックのチームは潜在的な事故を予測しようともしている。例えば、ハッブルのジャイロスコープに使われている細いワイヤーは徐々に腐食して切れてしまい、6つのジャイロスコープのうちすでに3つが故障したことがわかった。

ジャイロスコープがなければ、ハッブルは正確に目標を定めることができない。前回のサービスミッションでは宇宙飛行士がジャイロスコープを交換し、ワイヤーを腐食しないように強化して問題を解決している。

故障への高まる懸念

とはいえ、新たな問題が発生するたびに、老朽化した望遠鏡への懸念はどうしても高まる。ハッブル宇宙望遠鏡は、宇宙の年齢の解明や冥王星の小さな衛星の発見など、多くの天文学的成果に貢献してきた。「大変革をもたらしたと思います」と、ジョンズ・ホプキンス大学の天文学者であるアダム・リースは言う。

2011年にノーベル物理学賞を共同受賞したリースは、ハッブルのデータを利用して爆発した星(超新星)の観測結果から宇宙の加速膨張を明らかにした。リースによると、ハッブル望遠鏡には現在も少なくとも5倍以上の申し込みがある。つまり、天文学者たちからハッブル望遠鏡の使用可能時間の5倍以上の使用の申し込みがあるということだ。

この宇宙望遠鏡はまた、教育ツールとしての役割も果たしており、全世代の人々に宇宙科学への関心を呼び起こしてきた。「誰もがハッブルを知っています」と、ロチェスター工科大学の天文学者であるジェイハン・カルタルテペは言う。

彼はハッブルの画像を多用して複数の銀河の調査に取り組んでいる。「ハッブルはすっかり有名になりました。人々はハッブルが発見したことに関する記事を読んだり、写真を見たりすることを楽しんでいます。ハッブルといえばすぐに天文学のイメージが浮かぶと思います」

ハッブルの最近のハードウェア問題は、後継機であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が軌道に打ち上げられる予定日のわずか1カ月前に発生した。

ハッブルと同じように、この新しい望遠鏡も多数の驚異的な画像を収集することになるが、より赤外線に近い波長を探査するように設計されており、銀河や星雲の中の塵の多い部分にまで入り込める。リースは、この望遠鏡が天文学者や一般の人々にも同様に受け入れられるだろうと考えている。