仮想通貨「Worldcoin」は、ベーシックインカムを実現できるか

虹彩認証でコインを無料配布

運用が始まってからのWorldcoinの価値は、一般的な仮想通貨と同じようにオンラインの取引所における需要と供給のバランスによって決まる。だが、無料でWorldcoinを得るには。眼をスキャンするだけでいい。

すべての人が確実にWorldcoinの公平な分配を受けられるようにする目的で、運営元のWorldcoinは「Orb(オーブ、眼球の意味)」と名付けられた球形の装置を開発した。この装置によって個人に固有の虹彩のパターンを認識し、その人がコインを所有者として請求する権利をもっているかどうか照合する。

Worldcoinは数千個のオーブを全世界の「オーブ・オペレーター」と呼ばれる起業家たちに配布する。オーブ・オペレーターは、眼をスキャンする人々にWorldcoinを授ける役割を担うと同時に、スキャンした人数に応じて報酬をWorldcoinで受け取る。

虹彩認証が個人を認証する方法として選ばれたのは、誤認識の確率が低いからだとWorldcoinは説明する。虹彩は人体のほかの部位よりも個人に固有のパターンがあるので、認識精度が高いのだ。

ただし、虹彩認証の場合はオーブの“目玉”を思わせる不気味な外観もあって、いつまでも目が回り続けてしまいそうな気がしてくる(あまりに目玉っぽいので冗談を言ってしまった)。それに、例によってカリフォルニア発の新たなテック企業が個人情報を狙っているのではないか、といった疑念にもつながりかねない。

これに対してアルトマンは、このシステムは安全であり、Worldcoinが個人データを保存することはないのだと語る。虹彩のデータは、すべて「IrisHash」と呼ばれるデジタルコードに変換される。このコードは将来のIrisHashと照合し、すでにWorldcoinを受け取っている利用者へのWorldcoinの分配を拒むために同社のデータベースに保存されるが、虹彩の画像自体はデータベースから削除されるという。

「個人の虹彩の画像は撮影しますが、画像そのものを保存せずにコードに変換し、そのコードをアップロードします。虹彩の画像は決してアップロードしません」と、アルトマンは言う。「わたしたちは虹彩の画像を除いて、個人に関するそれ以上の情報は何も知らないのです」

不正な請求を防げるか

Worldcoinのプロモーション資料によると、同社はすでに30台ほどのオーブをさまざまな国で試験運用しており、実際に人々の眼や身体、顔の画像と、それらの3次元スキャンといった多くのデータを保存しているという。同社の公式ブログでは、「実地試験中のプライバシーについて」と題して次のように説明されている。

「こうしたデータがなければ、地球上のすべての人に公平かつ包括的にWorldcoinを分配できません。しかし、わたしたちはそれらのデータの収集を遠からず停止するつもりですし、個人情報を売却するビジネスは決して手がけないことを明確にしたいと考えています」

Worldcoinが「実地試験の段階」と呼ぶ状況にあるいま、画像データの収集はオーブを動作させる不正検出アルゴリズムの精度を高めることが目的だという。この段階は2022年初頭まで続く見込みで、それまでに収集したデータは「(アルゴリズムを)十分に訓練できた」段階で削除するという。

アルトマンやマックス・ノベンドスターンとWorldcoinを共同創業したアレックス・ブラニアは、オーブのシステムによって有益な「インセンティブのアライメント(調整)」が可能になると説明する。何かを無料で得られると期待してオーブのシステムに引き寄せられる人々がいる一方で、大勢のオーブ・オペレーターは報酬が目的でオーブのシステムに人々を盛んに勧誘することになるはずだ(ケニアの求人サイトに掲載された広告によると、Worldcoinではオーブ・オペレーターを募集する人材を雇っている)。

運営元のWorldcoin自体もオーブを配布する役割のほか、不当な報酬を得るためにオーブに手を加えようとする(例えば同一人物を2回スキャンする)ような悪質なオーブ・オペレーターを締め出す役割を担い続けることになる。

だが、仮にWorldcoinについて何も知らない人々の虹彩をオーブ・オペレーターがスキャンした場合にも、報酬は得られるのだろうか。ブラニアによると、Worldcoinは不正検出システムをテストしている段階にあり、「あまり詳しいこと」は話せないという。

しかしWorldcoinは理論上は、不適切な行為を突き止めたり、人目を盗んでオーブのシステムで不正を働く者を排除したりする目的で、利用者によるWorldcoinの請求履歴や取引の記録を調べることができる。