北海道で赤潮被害拡大80億円 原因は国内初「低水温でも増殖」プランクトン

襟裳岬に近い太平洋岸。死んだウニなどの殻が散乱していた=15日、北海道えりも町庶野(坂本隆浩撮影)
襟裳岬に近い太平洋岸。死んだウニなどの殻が散乱していた=15日、北海道えりも町庶野(坂本隆浩撮影)

北海道東部の太平洋沿岸で9月下旬以降、赤潮によりウニやサケが死滅する漁業被害が拡大、被害総額は約80億円に上っている。国は緊急支援策として令和3年度補正予算案に総額約21億円を計上する方向で調整中だが、赤潮の主原因は国内初確認の植物プランクトンで、低水温でも増殖するため冬になっても収束は見通せない。被害がさらに拡大する懸念もあり、漁業者からは不安の声が上がっている。

太平洋に突き出た襟裳岬に近い、えりも町庶野(しょや)の海岸。抜けるような青空の下、死んだウニの殻や貝が散乱していた。

この海岸で、白化したウニの死骸が大量に打ち上げられているのが見つかったのは9月21日。地元のえりも漁協では毎年300万粒の稚ウニを放流し、4年後に水揚げする種苗事業を進めているが、住野谷張貴専務理事(67)は「ほぼ全滅。先が見えず、死活問題だ」と肩を落とす。

道などによると、赤潮は釧路市の漁港で9月20日に初めて確認され、根室~日高地方の太平洋岸16市町に広がる。被害額は今月12日時点でウニ2700トン・71億8700万円、サケ2万7700匹・7300万円のほか、サクラマスやブリ、クロソイ、タコ、ツブ貝など計約80億円に上る。このほか複数年で最大90億円の被害を見込むとの報告もあり、総額は170億円規模になる可能性もある。

今回の赤潮は「カレニア・セリフォルミス」という植物プランクトンを中心に形成。同種の赤潮は昨年10月にロシア・カムチャツカ半島周辺で発生しており、国内では初めて確認された。道立総合研究機構の小宮山健太主査(60)は「このプランクトンは10度前後の低水温にも耐えて増殖するといわれる」と説明。冬になり海水温が下がっても収束は見通せない。

プランクトン「カレニア・セリフォルミス」(東京大学大学院農学生命科学研究科の岩滝光儀准教授提供)
プランクトン「カレニア・セリフォルミス」(東京大学大学院農学生命科学研究科の岩滝光儀准教授提供)

道内のウニ専門店は「道南産や輸入ものを扱っているが、品薄で仕入れ値が1、2割上がった。12月からは利益を減らしても10~15%値上げせざるを得ない」。日高地方の漁協直売所でも、例年並んでいたウニやサケの姿はなく、売り子の男性は「観光客に足を運んでいただくのは心苦しい」と厳しい表情で語る。

国が検討中の約21億円の緊急支援策のうち、約20億円はウニの死骸除去や移植・放流を進める漁業組織の補助に充当。また全道で行う海水モニタリングに約7600万円を盛り込む。(坂本隆浩)

【赤潮】 海水中の植物プランクトンが異常増殖し、海の色が赤褐色や茶褐色に変わる現象。海中の栄養や日照など、さまざまな要因が重なって起こる。プランクトンが出す物質が魚のえらの細胞を壊して呼吸困難にさせ、大量死を引き起こすとされる。