国家安保戦略に経済安保の明記を 北村前NSS局長

前国家安全保障局長の北村滋氏=20日、東京都港区(桐山弘太撮影)
前国家安全保障局長の北村滋氏=20日、東京都港区(桐山弘太撮影)

政府は、来年の通常国会に提出を目指す経済安全保障推進法案(仮称)の策定を加速させるため、26日に有識者会議を設置する見通しだ。メンバーに起用される国家安全保障局(NSS)前局長の北村滋氏が産経新聞の単独インタビューに応じ、推進法整備の必要性を語った。(永原慎吾)

--岸田文雄政権は国会に経済安保推進法案を提出する方針だ

「令和2年4月に国家安全保障局の経済班が発足したが、外国資金の受け入れ状況の開示、留学生の入国審査の強化などは運用の改善でやってきた。今回は、法律をつくらなければ手当てできないことに取り組んでいくということだろう。例えば、基幹インフラに安全保障上懸念のある企業が参入したり、特定事業に懸念物品を使用したりすることを防ぐ必要がある。こうした点で法律上の手当てが必要か、検討が加えられていくのではないか」

--首相は経済安保の明記などを視野に国家安全保障戦略の改定にも意欲を示している

「米国ではすでに国家安保戦略の中に経済安保の部分が書き込まれている。残念ながら、わが国の国家安保戦略にはこれがない。国家戦略を考えるときに必要な要素として、外交、インテリジェンス、軍事、経済の4要素の英語の頭文字をとり、『DIME(ダイム)』と呼ばれているが、わが国の国家安保戦略に経済安保の要素を加えることにより、コンプリート(完全)なものになる」

--新型コロナウイルス禍で浮き彫りになったサプライチェーン(供給網)の強靭化にどう取り組むか

「まずサプライチェーンの実態を把握しなければならない。それを担保するための根拠も必要だ。有識者会議の議論でも出てくるだろう。半導体、重要鉱物、大容量電池、医薬品などの重要分野でサプライチェーンの脆弱性をなくすための取り組みがぜひとも必要だ」

--AI(人工知能)や量子などの機微技術の海外流出を防ぐには

「これまでも外為法改正などで取り組んできたが、安全保障上重要な技術の特許の非公開なども論点かもしれない。もちろん、こうした先端技術を成長戦略の一環として振興、育成していくことが第一だ」

--経済安保には民間企業の協力も不可欠だ

「重要技術の流出防止というと、民間には規制的な部分で受け止められるかもしれないが、優越的技術の流出は、フリーライダーにマーケットで駆逐されることにもつながる。こうしたことを十分に認識してもらう必要があるのでないか」

きたむら・しげる 昭和31年東京都生まれ。警察庁を経て平成23年に内閣情報官。安倍晋三政権下で特定秘密保護法や情報体制の強化などを手がけた。令和元年に国家安全保障局長に就き、経済班を発足させ、経済安保政策を推進した。3年7月に退官し、現在は北村エコノミックセキュリティ代表。