コンパクトでありながら5人乗り、そのうえ大きな荷物も積める。パワーは控えめだが、取りまわしのよさで狭いパーキングでも駐車は楽々。さらに後席にはパワースライドドアが設定され、チャイルドシートも使いやすい。子育て世代に絶大な支持を誇る元祖コンパクトトールワゴンのスズキ「ソリオ」がフルモデルチェンジ。気配りの行き届いた装備と広い車内で、お出かけが楽しくなる。4代目になった新型ソリオに試乗した。
(土井繁孝、写真も)
今回試乗したのは、最高グレードの「ハイブリッドMZ」。全長3790ミリ、全幅1645ミリと先代より長さが80ミリ、幅が20ミリほど大きくなった。サイズはアップしたが、取り回しなど先代と比べて大きな差はなく、広くなった車内のメリットが上回る。5人乗りを謳うが、リアシートは、セパレートタイプを採用する。アームレストが装備され、2人が乗るには快適だが、大人が3人乗るには厳しい感じ。
その代わりといってはなんだが、後席の座り心地はクラスを超えた快適さ。身長188センチの筆者が座っても、膝先や天井に余裕がある。このボディーサイズでどうすればこのスペースができるのか不思議なほどだ。
トールワゴンは走りを楽しむというより移動を楽しむクルマ。1・2リッターの4気筒エンジンは、ノンターボで91馬力とパワーは控えめ。車重が1トンほどなので、日常使いで不便を感じることはないだろう。
乗り心地は柔らかめで、コツコツしたショックも少なく、きつめの横風にもふらつくことはなかった。このクラスにしては車内も静かで、家族の会話も弾みそう。
少し山道も走ってみたが、スピードを上げると横揺れが大きく、ボディーがふわふわする。急なカーブなどはゆっくりした走りを心がけたい。
今回は記者1人の試乗のため、パワーや乗り心地に不満はなかったが、5人が乗ったときの加速感や、ブレーキの利き具合などは気になるところだ。
2005年のデビュー当初はライバル不在で大ヒット、スズキのクルマ作りのうまさを発揮した会心の一台となった。爆発的な人気をうけて、ライバル各社もこのジャンルに新型車を投入し、激しい競争が続く。
トールワゴンは、限られたスペースをフル活用する日本ならではパッケージング。最近はさらに車高を上げたハイトワゴンも人気を集める。広い車内の魅力は大きいが、安定感のある乗り心地が課題だろう。
車高の高いワゴンにはEV化のメリットは捨てがたい。EVは複数のバッテリーを床に搭載するので、バランスが取りやすく、重心が低くなる。エンジンに比べてモーターは軽いので、安定した運転性能を生み出す。新しい技術を生かして、トールワゴンは、さらなる進化を続けそうだ。