朝晴れエッセー

ふるさと・11月21日

真っ青な空にちぎれた雲が遊ぶ、昼下がりの散歩道で、ふるさとの遠い空を思い出していた。

行く道の右側にはさつまいも畑、左側にはさといも畑が広がる。その一隅に1本の柿の木が立っていた。

しばらく上を見あげ、たたずんでいること数分。柿の実が色づいている。甘柿か渋柿か分からないけど、たわわに実をつけていた。

「今食べたくなる果物は何ですか」と問われたら、最も身近にあった「柿」と答えるだろう。

夢と希望を追い求めて、風土も習慣も違う関東にやってきた。春遠い新潟を後にする3月、柿の木は裸木、遠くの山々には残雪が輝いていたっけ。

思い返すと、家の周りには数本の種類の違う柿の木があり、唯一のおやつでもあった。どこの家でも大抵は1本くらいはあって、秋の柿もぎが風物詩となっていた。

手でもぎとるか、長い竹ざおにY字形の枝をくくりつけて、ひっかけてゆさぶって落とすかという原始的な手段であった。

勢いあまって地面に「ドスン」と音をたてて落下、割れたり土がくっついたりと、最悪なときもあった。

無傷に取れたら最高のでき、そのときのおいしかったことったらない。

楽しかったなあと思う。

日光をいっぱい浴びて熟した柿、子供のころに覚えた自然のあの味は、いつまでも残っていて、遠い昔の思い出となってしまった。

根岸敦子 82 さいたま市見沼区