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はかなくも男らしい哀愁を 草彅剛「青天を衝け」

草彅剛
草彅剛

近代日本の礎(いしずえ)を築いた実業家、渋沢栄一の激動の生涯を描く大河ドラマ「青天を衝(つ)け」も残り5話。栄一に多大な影響を与え、彼と異なる場所で江戸から明治の大転換期を生き抜いたのが、最後の将軍、徳川慶喜(よしのぶ)だ。栄一の〝動〟に対し〝静〟の人物として物語に深みを与えたのは、間違いなく慶喜役のこの人だろう。

さぞ思い悩んでの役作りと思いきや、「歴史に興味がなかったので、演じるまで慶喜を知らなかった。すばらしい脚本ですけど、せりふも自分の部分しか読まなかったです」というから驚きだ。事前にスタッフから簡単に説明は受けたものの、知識は入れずまっさらな状態で撮影に臨んだ。「将軍になるかどうかも分からないそぶりでいいといわれたので」

そこから1年にわたり演じてみて、慶喜にどんな印象を持ったのか。「優しい人だなと思いました。最初はつかみどころがなくミステリアスでしたが、どこか寂しげではかなく、でも男らしい」とは、視聴者が草彅の慶喜から受ける印象そのもの。物語終盤の慶喜の見どころは、「一線を退いてからの男の哀愁、枯れていく感じ」だという。

大河への出演は17年ぶりだが、ここまで重要な役どころを演じたのは初めて。「夜中の2時に起きて、4時に現場に行き、馬に乗って撮影したんです。それなのに、使われたのは12秒くらい」と笑わせながら、「大河は規模も時間も大掛かり。たくさんのスタッフと出演者に元気をもらいました」と振り返る。

特に、栄一を演じた吉沢亮のまっすぐなまなざしには心を動かされた。「(俳優として自分が)先輩ではありますが、演じる上でそんなことは関係ない。栄一にかける亮くんの思いが伝わってきたおかげで、余計なことを考えずピュアなお芝居ができた。同志として、役を超えた仕事ができたんじゃないかな」

2人の強い信頼関係は、「言葉を交わさずとも、激動の時代を生き残った2人にだけ通じる空気感があっただろう」と推察する栄一と慶喜の関係にも重なる。それだけに、「1年間集中を切らさず芝居できたのは自信になった。人生のターニングポイントになったかな」と達成感を口にしつつ、「亮くんも、演じ終わったら絶対に自分の財産になる。亮くんをほめてあげたい」とインタビュー時はまだ撮影中だった同志をねぎらうことも忘れなかった。(道丸摩耶)

くさなぎ・つよし 昭和49年生まれ、埼玉県出身。平成3年にアイドルグループ「SMAP」のメンバーとしてCDデビュー。9年のドラマ「いいひと。」(フジテレビ)で連ドラに初主演し、その後も「僕の生きる道」「任侠ヘルパー」(同)などに主演。SMAP解散後はプロジェクト「新しい地図」として活動し、「ブラタモリ」(NHK)のナレーションやCMなど幅広く活躍する。

「青天を衝け」はNHK、日曜午後8時。