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クリエイティブディレクター、佐藤可士和 『美しいノイズ』 未来切り拓く挑戦の軌跡

谷尻誠、吉田愛「美しいノイズ」
谷尻誠、吉田愛「美しいノイズ」

『美しいノイズ』谷尻誠、吉田愛著(主婦の友社・4180円)


5年前の夏、米国のセドナやグランドキャニオンを旅していたとき、偶然にも南ユタのホテルで建築家、谷尻誠さんに初めてお会いした。

谷尻さんといえば、瀬戸内しまなみ海道の本州側起点、広島・尾道に、自転車のままチェックインできるホテル「ONOMICHI U2」をつくるなど、カルチャーを感じる建築で非常に注目されていた。その翌年にはご自身の設計事務所「サポーズデザインオフィス」の拠点として、斬新な食堂付きオフィスをオープンさせた。そこはなんと社員だけでなく一般の方々も入って食事ができるという。社員の食堂+社会の食堂で、名は「社食堂」。街に開かれた食堂のあるアトリエ系設計事務所(創造性を重視する小規模な設計事務所)はどうやって成り立っているのだろうと、僕も訪問した。異なる機能を融合させた空間は心地よく、新しい働き方、いや生き方を提示していた。

近年の作品「hotel koé tokyo」(東京)や「虎ノ門横丁」(同)はいずれも人が集う場として、空間だけでなく、人々が過ごす時間、場の空気を含めてデザインされている。建築家としてのキャリアにとどまらず、設計の視点から敷地のポテンシャルを引き出す不動産会社や、設計・施工の両輪で質の高いクリエイティブを目指すための施工会社まで主宰。さらにキャンプ場のオーナーも務めるなど、彼の活動そのものが作品といえる。存在自体が新しい、非常にユニークなクリエイターなのだ。

本書はそんな彼と、共同代表の吉田愛さんが、サポーズデザインオフィス20年の軌跡と仕事哲学をまとめたもの。〝辞書のような文庫本〟というように、文庫本サイズなのに900ページ超! 美しくも尋常でない佇(たたず)まいがまさにサポーズらしい。谷尻さんと吉田さんそれぞれの視点で折々の思いが綴(つづ)られ、彼らがこれから切り拓(ひら)こうとしている未来まで見渡せる。とんでもなく厚いのにすぐ読めてしまう、刺激に満ちた一冊。

「世界は「関係」でできている」
「世界は「関係」でできている」

『世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論』カルロ・ロヴェッリ著、冨永星訳(NHK出版・2200円)


世界的ベストセラー『時間は存在しない』の著者の最新作。世界が実体ではなく、関係にもとづいて構成されているとはどういうことか? この世界を理解するための、新しい視点を提示され、目を開かれる思いがした。


クリエイティブ・ディレクター、佐藤可士和
クリエイティブ・ディレクター、佐藤可士和

〈さとう・かしわ〉昭和40年、東京生まれ。多摩美大卒。クリエイティブスタジオ「SAMURAI」を主宰し、企業のブランド戦略やデザインなどを手掛ける。