話題の『ムショぼけ』が描く出所後の悲哀と希望

沖田さんもドラマ主人公の陣内と同様に服役経験があり、過去2回、トータル12年間にわたり服役。そんな沖田さんが小説家を志したのは25歳のころだった。

刑務所の中で浅田次郎さんの小説「鉄道員(ぽっぽや)」に出合い、感銘を受けた。3冊だけ持ち込める差し入れのノートの一行一行に、書ける限りの小さな文字でさまざまな小説を書き写し、文章力を磨いた。

出所後は所属した暴力団組織を脱退。コピー機の運搬業務などで生計を立てながら、40歳で作家デビューを果たした。

旧知の警察官からエールも

沖田さんは「出所後の逆境はどこまで行っても自業自得で、それを言い訳にしても仕方がない。頑張って現状を打破するしかない」と強調する。「ムショぼけ」の構想は服役中から練り始めたといい、主人公、陣内の生き方に自らの境遇を重ねた。

9月に発売された沖田臥竜さんの小説「ムショぼけ」
9月に発売された沖田臥竜さんの小説「ムショぼけ」

10月に始まったテレビドラマは、ABCテレビ(毎週日曜午後11時55分~)とテレビ神奈川(同火曜午後11時~)で放送中で、物語はラストに向けていよいよ佳境に入る。

放送開始からまもなくして、旧知の警察官から1本の電話が沖田さんのもとに入った。

電話口の相手は「すぐに連絡するのはしらじらしくて嫌だなと思ったけど」と前置きし、こう続けた。「放送を見ています。応援していますよ」

罪を犯し、かつて迷惑をかけた警察官からのエールに「想像もしていなかった」と沖田さん。出所後の頑張りへの評価と受け止めると、無性に喜びがこみ上げてきたという。

「世の中捨てたもんじゃない」。改めてそう実感している。(山本考志)