話題の『ムショぼけ』が描く出所後の悲哀と希望

元受刑者の社会復帰を描く小説「ムショぼけ」の著者、沖田臥竜さん=10月8日、兵庫県西宮市
元受刑者の社会復帰を描く小説「ムショぼけ」の著者、沖田臥竜さん=10月8日、兵庫県西宮市

待ち焦がれた塀の外に出てみれば、独居房で増えた独り言が抜けず、小さな物音にも目を覚まし、コンビニの女性店員とはまともに会話ができない-。刑務所に長期間服役した元暴力団組員の社会復帰をテーマにした9月発売の小説「ムショぼけ」(小学館文庫)が翌10月にテレビドラマ化され、話題を呼んでいる。元組員でかつて服役した沖田臥竜(がりょう)さん(45)が自身の体験をもとに、原作を手がけた。出所直後の戸惑いや逆境をリアルに表現する一方、人間関係の中で希望を見いだす主人公の姿を前向きに描いている。

妻子とは音信不通に…

「ムショぼけ」とは、自由を制限された刑務所で長期間過ごした人が、社会の環境の変化やスピードに合わせることができない現象をいう。

「受刑者は長い刑務所暮らしで塀の外の暮らしに夢を膨らませるが、出所してすぐに現実を突きつけられる」(沖田さん)。暴力団組織の指示で殺人未遂事件を起こし、懲役14年の刑期を終えて出所した主人公、陣内宗介も、娑婆(しゃば)で過ごしたあの頃とはすっかり様変わりした社会になじめず、頭を悩ませる。

出所を出迎えてくれたのは年老いた母1人。事件を起こす見返りに5千万円の報酬を渡すと約束した組織はすでに解散、妻や子供とは音信不通になっていた。つてを頼って働き始めた内装工事会社では、元組員という素性がバレて解雇に。自暴自棄になりつつも、家族や仲間に支えられながら生活を立て直していくという展開でドラマは進む。

「鉄道員」に感銘

現実社会でも、長期間服役したがために、金銭や仕事のスキルがなく、さらには他人の助けを得ることができずに再び犯罪に手を染め、刑務所に舞い戻るという元受刑者は多い。

警察庁の犯罪統計によると、刑法犯の検挙者数は平成17年から減少を続けているものの、検挙者に占める再犯者の割合を示す「再犯者率」は増加しており、令和元年は48・8%にも上った。刑法犯の2人に1人が再犯者で、特定の層が犯罪を繰り返す傾向が強まっている。