米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金を大量発行する量的緩和規模を先細りにする「テーパリング」に踏み切った。対照的に、日銀の異次元金融政策は無力化の危機を迎えている。FRB政策転換と日銀の異次元金融緩和継続の組み合わせは円安を助長し、石油価格の急上昇と重なって、日本の家計や企業の負担を大幅に増やす。
FRBのテーパリングが円などの対ドル相場を左右しかねないのは、ドルが世界の基軸通貨であることに加え、各国・地域の中央銀行の資金発行規模が外国為替市場での需給関係を揺さぶるからだ。参考になる指標は、FRB資金発行1ドル当たりの、各国中央銀行による通貨発行額である。著名投機家のジョージ・ソロス氏の名にちなんだ「ソロス・チャート」(以降は「チャート」に省略)と呼ばれる。チャートの数値が増えると円安・ドル高に振れがちで、下がると円高・ドル安になりやすい。
2008年9月のリーマン・ショック以降、中央銀行による大規模な量的緩和政策が世界で当たり前になった。外為取引を伴う金融市場への円の資金流入が一挙に増えると、円の供給過多となってドルが買われる。同時にドル資金供給が急増すると同じくドルの需給関係が緩み、ドルが売られ、市場の円安・ドル高圧力は相殺される。