蛇口からみかんジュースの脱・都市伝説スポット

「みきゃんパーク梅津寺」で購入できる「蛇口みかんジュース」
「みきゃんパーク梅津寺」で購入できる「蛇口みかんジュース」

蛇口をひねるとジュースが出てくる-。そんな愛媛の都市伝説を現実化した松山市の施設が静かな人気を集めている。愛媛県のイメージアップキャラクター「みきゃん」と柑橘(かんきつ)をテーマにした「みきゃんパーク梅津寺(ばいしんじ)」。運営するのは農業の6次化を成し遂げた柑橘農家で、農業経営の新たな展開としても注目される。

ガラス越しに見学できる1階の工場。柑橘を絞ってジュースを作っている
ガラス越しに見学できる1階の工場。柑橘を絞ってジュースを作っている

のどかな絶景

施設は1階がジュースなどの作業工程が見える加工場と販売スペース、2階にミカンを扱うカフェを備えている。

カフェから眺める景色はのどか。目の前に海が広がり、近くの伊予鉄道梅津寺駅のプラットホームに入っては出ていく電車を眺めながら、柑橘をふんだんに使ったスイーツを楽しめる。

みきゃんパンケーキと伊予柑ソフト、ホットコーヒー
みきゃんパンケーキと伊予柑ソフト、ホットコーヒー

メニューは、季節の手搾りジュース(500円)、みきゃんパンケーキ(600円)、みかんおにぎり(2個、300円)など。

1階はみきゃんのグッズや柑橘加工品がずらりと並ぶ。水道の蛇口をひねるとミカンジュースが出るという「愛媛の都市伝説」を実体化した「蛇口みかんジュース」(350円)もある。

瀬戸内海を眺めてゆっくりくつろげる「みきゃんパーク梅津寺」2階のカフェ
瀬戸内海を眺めてゆっくりくつろげる「みきゃんパーク梅津寺」2階のカフェ

イヨカンへのこだわり

パークを運営しているのは松山市の柑橘加工会社「修斗」。代表で柑橘農家「石丸農園」の石丸智仁さん(39)は、「ミカンを守らなければいけない」と、東京理科大を卒業後、食品会社勤務を経て、ふるさとへ帰り、同社を立ち上げた。

石丸さんによると、ソフトクリームや、蛇口みかんジュースには、イヨカンを使っているという。

「紅まどんなといった高級な柑橘が出てきているが、その分、イヨカンの価格は下がっている。城北地区と呼ばれる松山市のこの辺りはイヨカンの産地。だからイヨカンを守っていくというスタンスです」と話す。

農家は生産者の高齢化と後継者不足が課題。加工会社設立の狙いについて石丸さんは「生のミカンが売れるのは12~4月。残りの期間をどうするか。ミカンを搾ってジュースやゼリーにして売ろうと思った」という。「自分のところで作って、自分のところで売る」。当時はまだ珍しかった農業の6次化への挑戦だった。

6次産業化とは、農林漁業者(1次産業)が食品加工(2次産業)や流通販売(3次産業)にも取り組むこと。1×2×3の掛け算の6を意味している。

石丸さんの広い園地では温州ミカン、イヨカンをはじめ20種類以上の柑橘を作っている。コロナ禍で観光地が苦境に立たされるなか、みきゃんパークも「開けては閉め、閉めては開けの繰り返しだった」という。それでも「メーカーとしてミカンを作っているからやっていけている」と石丸さんは話す。

「みきゃんパーク梅津寺」を運営する「修斗」代表の石丸智仁さん
「みきゃんパーク梅津寺」を運営する「修斗」代表の石丸智仁さん

全国2位のゆるキャラ

みきゃんは平成23年11月、ゆるキャラブームに乗って誕生。県によると、ミカンの「み」と子犬の鳴き声「キャン」を組み合わせた名前で、鼻はハート形、尻尾にミカンの花がついている。平成25年の「ゆるキャラグランプリ」で11位、26年に3位、27年に2位となり、人気が定着した。

昨年はマルチクリエーター、パントビスコさんとコラボし、インスタグラムで犬の「ぺろち」と愛媛を巡る漫画を配信した。

梅津寺駅構内に設置されている「東京ラブストーリー」ロケ地の看板
梅津寺駅構内に設置されている「東京ラブストーリー」ロケ地の看板

みきゃんのデザインは、県に申請すれば無償で使用できるとあって、地元企業・団体なども活用。今年で誕生から10年で、この間に腐ったミカンが好きという「ダークみきゃん」、子供たちの笑顔が集まったという「こみきゃん」も加わった。

みきゃんパーク梅津寺は令和元年12月にオープンし、まもなく2年。パーク近くの梅津寺駅は平成3年の人気テレビドラマ「東京ラブストーリー」のロケ地として、長年にわたりファンの〝聖地〟にもなっている。休日には県外客も訪れ、新たな観光スポットとして定着しつつあるようだ。(村上栄一)