価値判断の「自分軸」紙面から育てる 「知窓学舎」塾長、矢萩邦彦さん

実践教育ジャーナリストで学習進学塾「知窓学舎」塾長の矢萩邦彦さん
実践教育ジャーナリストで学習進学塾「知窓学舎」塾長の矢萩邦彦さん

21世紀を生き抜く力を育てるため、新たな学習指導要領のもと、学校現場に求められているのが「主体的・対話的で深い学び」だ。実践教育ジャーナリストで学習進学塾「知窓学舎」塾長の矢萩邦彦さんは長年、「探究型」と呼ばれる手法を授業に取り入れてきた。「紙の新聞だからこそできる能力開発がある」と語る矢萩さんに、具体的な活用法と効果について話を聞いた。

--新聞活用の際、テーマ選びのポイントは

「子供たちが実感をもって想像できるニュースがいい。SDGs(持続可能な開発目標)を取り上げるのもいいが、飢餓をなくすにはどうしたらいいかなど、大きなテーマで問いかけても、子供たちの実体験とは距離がある。まずは自分自身の抱える問題や家族の問題を発見し、社会との関連性を探りながら少しずつ視野を広げていくことが大事で、そのためには新聞の地域ニュースのほうが社会の出来事を『自分事』として捉えられ、理解も深まる」

--子供が興味をひくニュースとは

「すでに起きた出来事を説明するだけのニュースでは、知っているかどうかをたずねる『一問一答型』の思考にしかならない。『探究型』となるのは、謎が残されているニュースだ。例えば、日本企業が開発した『空飛ぶバイク』が7770万円で受注が始まったというニュースを授業で取り上げたところ、値段の妥当性、何に使えるか、リスクや法律など、子供たちから次々と意見が出た。まだ分からないことが多いテーマは、予測や見通しを立てる能力開発につながる」

--紙の新聞だからできることは

「俯瞰(ふかん)して読むことに新聞の良さがある。高い視点から眺めるという身体的な体験をすることで、頭の中でも情報を俯瞰して捉えられ、抽象的な思考が促される。また、記事をはさみで切り、のりで貼って物理的な成果物を残すという作業も達成感につながる。社会的なテーマに関心がなくても、切ったり貼ったり手を動かす作業には興味をもつ子もいて、副次的に言葉を知ったり、知識を獲得したりできる」

--新聞を使うことで、これからの時代に必要な、どんな能力を育てられるか

「幸せな人生を歩むうえで大切なことの一つは、自分の行動を自分で決定していくことだ。新聞を読み比べると、共感できる記事とそうでない記事に出会い、価値判断をする上での『自分軸』が育っていく。一朝一夕に獲得できるものではないが、新聞に触れることで、情報を自分の行動にひもづける『自己決定力』を育てられるのではないか」

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