原油備蓄放出、市場への影響は未知数 政治的メッセージの色合い濃く

高騰するガソリン価格が示される表示板=19日、奈良県内
高騰するガソリン価格が示される表示板=19日、奈良県内

原油価格の高騰を受け、政府が検討する石油備蓄の放出。原油市場への影響は未知数だが、専門家は産油国への政治的メッセージとしては有効と評価している。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは市場への影響について「放出期間や放出量にもよるが、限定的なものになるのではないか」と話す。2011年、リビア情勢の混乱を受け、日本など各国が協調して放出した際のWTIへの影響はわずかだったという。「今回も放出による影響が小さければ、かえって失望感が広がり、反動で再び高騰するリスクもある」と指摘。少しでも効果をもたらすには「多くの原油輸入国が協調して、まとまった規模の放出をする必要がある」とした。

一方、石油流通システムに詳しい桃山学院大学経営学部の小嶌(こじま)正稔(まさとし)教授は「原油価格の高騰抑制に対して、今の日本政府が唯一できること」と評価する。「米国をはじめとする諸外国と足並みをそろえ、産油国へのシグナルを出すことが価格高騰に対するブレーキになる」として、原油価格の鍵を握る、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」に対抗するための有効な手段になるとみる。また、緊急時に石油備蓄を柔軟に放出していくことは今後のエネルギー政策を考える上でも重要だと強調する。

物価上昇に苦しむ米国への配慮が背景にあるとも受け止められている今回の政府の対応。明星大学経営学部の細川昌彦教授も「効果は未知数だがやれることはやるという、現実的な判断。政治的なメッセージの意味も大きい」と述べた。