冬のお風呂「熱め」にしないで ヒートショックを防ぐには

疲れた体と心を緩める入浴。冷える冬はつい熱めの湯につかりたくなるが、芯まで体が温まらずにかえって体に負担もかかるという。26日の「いい風呂の日」を前に、効果的な入浴法を専門家に聞いた。

日本薬科大特任教授、石川泰弘氏
日本薬科大特任教授、石川泰弘氏

汗をかいたら…は間違い

冬は熱い湯に-。その傾向を裏付ける調査がある。

平成31年1月、東京ガス都市生活研究所が男女約2400人に夏と冬の浴槽の湯の設定温度を聞いた。すると夏は40度、冬は42度が最も多く、冬は「熱め」の設定が目立った。

熱い湯で冷えた体を緩めるうち、額に汗がにじむ…いかにも心地よさそうなイメージだが、「熱い湯につかって汗をかいたら体が芯まで温まった、と考えるのは間違いです」。

そう話すのは、アスリートらに入浴法など体調管理指導を行う、日本薬科大の石川泰弘・特任教授(スポーツ健康科学)だ。

石川さんによると、入浴の効用は①体温の上昇②血行の促進③リラックスを促す④良質な睡眠に導く-の4点。体が芯から温まると、免疫機能の活性も高まるという。感染症が流行する今、入浴の効果はあなどれない。

適温で10~15分

では、体が芯から温まる「いい湯加減」はいったい何度くらいなのか。

石川さんは「39、40度程度を基本に、自分が心地よいと感じる温度に」と話す。いわゆる「ぬるめ」だが、「体温よりも高ければ体は温まります」。

おすすめの入浴時間は、適温で10~15分。「その間、温まった血液を体中に何度も循環させる。これが体を芯まで温めて、健康にもよい入浴の極意です」

石川さんによると、心臓から押し出された血液が体を1周巡るのに、だいたい1分くらいかかる。10~15分ほどつかると、周回がそれだけ重なり、体の芯だけでなく末端にも温かな血と栄養が届く。

「ぬるめ」で疲れず

一方で、湯が熱いと長くつかっていられないため、むしろ体が温まらない。例えば、湯船の温度とつかる時間を①39度の湯に15分②42度の湯に3分-の2パターンに分け、それぞれ入浴から20分後、30分後…と体温の推移を見た実験では、39度の入浴のほうが手足の温まり具合に持続性があった。

「ぬるめ」がおすすめの理由は、ほかにもある。

湯が39度だと、自律神経のうち「交感神経」の働きが抑えられ、血圧が下がり気分がリラックス状態へと導かれる。しかし42度以上の熱めだと、長くつかっていられないだけでなく、交感神経が優位になり血管が収縮し、心拍が激しくなって血圧も上がり、むしろ体に負担がかかる。

これらの点に着目して、湯加減や入浴の習慣を見直してみよう。(津川綾子)

■ヒートショック対策は「暖める」

体を温め、免疫の働きをよくするのに役立つ入浴だが、秋冬ならではの注意点もある。

急激な温度変化で血圧が大きく変動し、心臓など体に負担がかかって起こる「ヒートショック」だ。毎年、秋から冬に死亡数が増え、特に高齢者に多い。厚生労働省の人口動態統計で見ると、令和2年は4724人の高齢者(65歳以上)が住まいの浴槽内での不慮の溺死・溺水で亡くなった。これは同年代の交通事故による死者数のおよそ2倍に上る。

「暖かいリビングから寒い脱衣所に移り、さらに衣服を脱ぐと寒くて急に血圧が上がります。しかしその後、湯船につかると急激に血圧が下がりやすい。これが危険につながる」と石川さんは説明する。

つまりヒートショックを予防するには、あらかじめ脱衣所、浴室を暖めておくとよい。

暖房がなくても、浴室はシャワーや浴槽の湯や湯気を活用すれば暖められる。 また、入浴中の発汗による脱水にも注意を促す。適温でも、気持ちのよさにまかせて長く湯につかると、脱水が進んで血液の粘度が高まり、いわゆる「どろどろ血」のような状況を招く恐れもある。「脱水を防ぐため、事前に水分をとってもらえたら」と石川さんは話している。