東京国際映画祭〝改革元年〟 手応えの半面で課題も

コンペ部門の審査委員長を務めたイザベル・ユペールさん ©2021 TIFF
コンペ部門の審査委員長を務めたイザベル・ユペールさん ©2021 TIFF

これまで「存在感が薄い」「独自色がない」と批判されてきた東京国際映画祭(TIFF)が今年は違った。〝映画の街〟である日比谷・有楽町・銀座地区に会場が移り、作品選定を担うプログラミング・ディレクターも交代。芸術性の高い作品が集まったと評価された半面、昨年よりスクリーン数が減るといった課題も残った。

コンペティション部門の審査委員長を務めたフランスの名優、イザベル・ユペールさんは「今回、野心的で多様性のある作品を選んでおり、それが成功している」と評価。「芸術性については、映画祭の目指すものを体現できるような力強い作品がそろった」と絶賛した。

一方、同映画祭チェアマンの安藤裕康氏は課題も残ったとして、「コロナ禍で内外の映画人同士の交流がほとんどできなかった。予算の問題もあるが、来年以降は充実させたい」と力を込めた。「それにはカンヌ国際映画祭などのように魅力のある映画祭にしなければいけない。たくさん人が集まるようになれば、さらに人が集まってくる。来年以降、そのサイクルに乗せていきたい」

また、今年は会場が六本木から移転したことに伴い、スクリーン数が10から8になり、上映作品が昨年の138本から126本に減少した。

安藤氏は「『大きなスクリーンで見たい』という声も聞かれた」とし、今回映画祭の上映で使われなかったTOHOシネマズ日比谷や丸の内TOEI、丸の内ピカデリーといった大きな映画館を視野に、「どこまで実現できるかわからないが、スクリーン数をもっと増やしたい」と語った。

国際映画祭と冠するに恥じない世界水準のレベルになったと評価される一方、一般受けするエンターテインメント性の高い作品がほとんどなかったとの指摘もある。

安藤氏は、「海外からリスペクトされるような質の高い作品を用意するのと同時に、幅広い層のお客さまにアピールできる要素も入れていかなければいけない」と、構成も再考したいとした。

今回はJR有楽町駅前に映画祭のチケットセンターが設置されたり、地下鉄の駅で動画を流したりするなど、PRにも力を入れた。ただ、会場付近の通りなどに掲げられていた映画祭のフラグ(旗)は、晴海通りや銀座通りといった目抜き通りでは、はためいていなかった。

「街の皆さんとも、もっと協力関係を築いていきたい。映画祭が盛り上がれば、地元も潤うはず。街との一体感をもっと出していきたい」(安藤氏)

(水沼啓子)