米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平が満票で最優秀選手(MVP)に輝いたのと対照的に、20年前のマリナーズのイチローは大接戦での受賞だった。28人の投票でイチローが獲得した1位票は11人。打率3割5分で首位打者に輝くなど大活躍したが、新人による受賞だったこともあり、米大リーグ関係者に大きな衝撃を与えた。
日本のプロ野球のMVPには賞金300万円が日本野球機構(NPB)より贈られる。一方で、米大リーグのMVPには賞金は出ない。大谷も今回の受賞に関して得たのは専ら名誉だ。しかし、米大リーグでは何年も実績を残しているスターがMVPを獲得した際、球団から特別の「ボーナス」が支払われるケースもある。
米大リーグでは球団が選手と契約を結ぶ際、年俸に加えて打席到達数や個人タイトル獲得などさまざまな条件をクリアした場合に報酬が上乗せされる出来高払いが一般的。有力選手がMVP受賞を条件とした出来高契約を結ぶ例も少なくない。
イチローが2001年に初めてMVPを受賞した際は、所属のマリナーズとの契約には、MVP獲得による出来高の付帯条項が盛り込まれていたため、15万ドル(当時のレートで約1845万円)のボーナス加算も実現した。
米大リーグ入りの契約時に、米国では実績ゼロの段階ながら代理人が〝だめ元〟でMVP獲得のボーナス条項追加をマリナーズに要求。これを球団側がすんなりとのんだ。イチロー氏は「チームの人はありえないと思って『どうぞ』と答えたそう。僕はうれしいけど」と球団の舞台裏のやりとりを披露して喜びを語っていたほど。周囲の評価を大きく上回るセンセーショナルな活躍だった。(上阪正人)