経済再生へ問われる医療体制 行動制限緩和

首相官邸=東京都千代田区
首相官邸=東京都千代田区

政府は19日に決定した行動制限の緩和策などを盛り込んだ基本的対処方針に基づき、経済を回して軌道に乗せたい考えだ。そのためには新型コロナウイルスの「第6波」の備えとして、医療体制の強化が欠かせない。年の瀬に向け、忘年会やクリスマスなど恒例行事はめじろ押し。帰省などで人の移動も活発化する。経済再生と感染拡大防止の両立がいよいよ問われる局面に突入する。

後藤茂之厚生労働相は19日の基本的対処方針分科会(尾身茂会長)で新規感染者数について「昨年の夏以降で最も低い水準が続いている」と述べる一方、「ワクチン接種が先行する諸外国で大幅な規制緩和の中でリバウンド(感染再拡大)が発生している。新たな変異株の発生動向も注視が必要だ」と警戒感を示した。

対処方針には、感染力が今夏の第5波と比べて2倍になった場合でも対応できるよう「入院を必要とする人が、まずは迅速に病床又は臨時の医療施設等に受け入れられ、確実に入院につなげる体制を整備する」と明記した。感染拡大時には確保病床の8割以上を稼働できる体制を構築する方針だ。

ただ、第5波でも8割以上を達成するのは容易ではなかった。コロナ病床として申告しておきながら実際は受け入れなかった「幽霊病床」が問題化し、入院できずに自宅で死亡するケースが相次いだ。

コロナ対策分科会の専門家らが第5波の医療逼迫(ひっぱく)を検証したところ、確保病床に対し50~60%程度しか使われていないにもかかわらず、入院が困難な患者が多数出ていたことが判明。確保病床数と実際の入院患者数の乖離(かいり)が、社会全体で「まだ大丈夫」という判断につながり、「経済活動のアクセルを踏み続ける根拠になった」と分析した。

なぜ乖離は起きたのか。

神奈川県の阿南英明・医療危機対策統括官は「行政は医療機関と密なコミュニケーションがないまま数字が積み上げられ、実効性が伴わないところに陥った可能性がある」と指摘。「行政からすると医療はブラックボックスのところがある。『本当に運用できる数字(病床数)を出してほしい』といったコミュニケーションが必要だ」と語る。

検証結果は病床に関し「他の疾患の患者治療を安易に犠牲にすることなく効率よく運用する」ことも求めた。経口治療薬(飲み薬)の年内の実用化が視野に入る中、コロナ医療とコロナ以外の一般医療とのバランスを考え直す時期を迎えているともいえる。

(坂井広志)