仁徳天皇陵の浸食被害、発掘で裏付け 抜本的対策が急務

仁徳天皇陵の墳丘を囲む堤の内側で発見された円筒埴輪列。浸食されている様子もうかがえる=19日午前、堺市堺区(恵守乾撮影)
仁徳天皇陵の墳丘を囲む堤の内側で発見された円筒埴輪列。浸食されている様子もうかがえる=19日午前、堺市堺区(恵守乾撮影)

国内最大の前方後円墳で世界遺産、堺市堺区の仁徳天皇陵古墳(大山古墳、墳丘長486㍍)を共同で発掘している宮内庁と堺市は19日、墳丘を囲む堤の両側で円筒埴輪列が見つかったと発表した。堤は2列に並ぶ円筒埴輪などで荘厳に飾られたことが分かった。一方で、周濠(しゅうごう)の水によって堤が浸食され、円筒埴輪(はにわ)列の多くが崩落した可能性が高いことも分かった。浸食被害は墳丘に加えて堤でも進んでいることが明らかに。保全整備にあたっては、古墳全体を後世に残すための抜本的な対策が欠かせない。

周濠の水は、同庁の平成28年のレーザーや音波による測量調査で水深2~4メートル、水量は34万立方メートルと推定されている。大阪平野に築かれた同古墳は、西側に広がる大阪湾からの北西の季節風を直接受けるため、周濠の波浪も高くなる。今回調査された堤の内側は西に面しているため、浸食を受けやすい状態にあった。

同庁の徳田誠志・陵墓調査官は「堤で埴輪列がどの程度残っているのか調べ、浸食がひどければ、そこから手当てをしないといけない」と話す。

過去の調査で、墳丘も長年の間に少なくとも10メートル前後が浸食されたとみられ、古墳全体が〝満身創痍(そうい)〟の状態だ。発掘調査は今後も堤や墳丘縁辺部で行われ、浸食状況を確認したうえで、護岸工事に取りかかる予定。ただし、工事の時期はめどが立っておらず、10~20年後との見方もある。

福永伸哉・大阪大大学院教授(考古学)は「堤の内側の埴輪は、浸食によってずれ落ちるように傾いていた。よくぞ残ったという感じ」と指摘。「このままでは墳丘も堤もさらに削られていく。国が知恵を絞って抜本的な対策を考えるべきときに来ている」と話した。

一方で、工事にあたっては周濠の水を抜く必要があり、底にたまったヘドロを除去すれば、墳丘から転落した埴輪や葬送儀礼に関する祭祀(さいし)遺物など新たな発見も期待される。調査の目的は古墳の保全だが、国内最大の古墳に葬られた権力者の姿に迫る貴重な機会でもある。

発掘や工事は大規模で長期にわたるとみられるだけに、地元や国民の理解は欠かせない。同庁と堺市は今回の発掘成果について、平成30年のときと同様に、一般向けの写真速報展や出土品の展示を検討している。その際は、浸食など古墳の損傷状況も含めた詳しい説明が求められる。(小畑三秋)