大谷翔平「二刀流」成功の背景 肉体とフォームの改造を分析

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手(27)が19日、ア・リーグ最優秀選手(MVP)を満票で受賞した。メジャー4年目の今季は打者で46本塁打、100打点、26盗塁をマークし、投手でも9勝(2敗)を挙げた。投打の「二刀流」での歴史的活躍の背景として、専門家は肉体とフォーム改造の成功を指摘する。科学的な視点で大谷の快挙を分析した。(神田さやか)

大谷が今季、本塁打を量産した要因には、打撃フォームの大きな改造がある。米大リーグ機構(MLB)の公式データ解析システム「スタットキャスト」を基に、ネクストベース主任研究員の神事努氏が算出した数値によると、昨季よりも平均の打球速度は約6キロ、打球角度は約7度、それぞれアップした。MLBでは数年前から、長打率を上げるため、角度をつけた飛球を打つ「フライボール革命」が起こっている。打球速度が158キロ以上で角度が30度前後のとき、8割以上が安打になることが知られており、神事氏は「体を大きくし、バットの軌道を変える取り組みを行って(大谷は)今季、『フライボール革命』を起こした」とみている。

一方、投手としては、2018年秋に右肘の靱帯(じんたい)再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受け、肘に負担の少ない投球フォームへと変更。神事氏によると、大谷の直球はあまりシュート回転しないのが特徴で、2018年から比較して約6センチ分、ボールの横変化が減った。リリースポイント(投手板からボールがリリースするまでの距離)も18年の約200センチから21年は約207センチとボール約1個分前になり、神事氏は「肘の負担軽減のため、肘から前に出るフォームに変えたのでは。ボールを前で離すことで、カットボール気味の直球になった」と分析する。これにより、直球とほぼ同じ軌道で落ちるスプリットが、より効果的に使えるようになったという。

野球のフォーム分析に詳しい筑波大体育系(野球コーチング論)の川村卓准教授も「本塁打を増やすためにフォームと肉体の改造をしたと考えられる。背中や尻、太もも裏の筋肉が鍛えられ、ボールを下からすくい上げるバットの振りに耐えられるようになった」とみる。

投球も「後ろの肘の上げ方がコンパクトになり、疲労をためない合理的なフォームになった」と指摘する。以前は、ダイナミックなフォームで球速160キロ以上を連発していた。今季は150キロ前半から中盤の直球が増えた。「球速が多少、落ちてもしっかりと制球されれば、打者を押し込むことができる。スプリットやスライダーも肘に負担をかけることなく、投げられるようになったのが大きい」と川村准教授。投球での疲労が軽減され、打撃のパフォーマンス維持にもつながった。

加えて、投手をやることで「投球で必要になる筋肉を打撃にもうまく利用している。上半身や肩甲骨の可動域が広くなり、パワーのみに頼らないしなやかな打撃ができている」と相乗効果も挙げる。一般の強打者タイプの選手は、ウェイトトレーニングで筋力をつけ、パワーを最大限生かしてボールを飛ばすが、しなやかさに欠ける面がある。「投手をやっていると、運動を伝達する動きが必要で、可動域が広くなければならない。(大谷は)変化球を我慢して逆方向へ飛ばす能力が高い」という。

オールスター以降、本塁打のペースが落ちた。来季の活躍について、川村准教授は「後半は(打撃は)肩の開きが早くなっていた。疲労もあったのだろう。今後、これらに対応し、1年間、しっかりとやれるかにかかっている」と期待する。

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