主張

東芝3分割へ 企業価値は向上するのか

オンラインで記者会見する東芝の綱川智社長=12日、東京都内(東芝提供)
オンラインで記者会見する東芝の綱川智社長=12日、東京都内(東芝提供)

東芝が主要事業ごとに会社を3分割する経営計画をまとめた。総合電機メーカーとして多様な事業を手掛けているが、相乗効果が見込める事業を集約して上場させることで経営を効率化する。

だが、会社をただ分割するだけでは企業価値は向上しない。事業構造も抜本的に見直し、国際競争力を高める経営改革も進める必要がある。同時に、東芝が保有する防衛や半導体技術の海外流出を防ぐ取り組みも不可欠だ。

同社は今年だけでも社長や取締役会議長が辞任や交代するなど経営体制の混乱が続いている。昨年の株主総会では会社側が株主の権利行使に介入したことも判明し、企業統治の機能不全が浮き彫りになった。企業価値を高めるためには徹底した統治改革が重要だ。

原発や再生可能エネルギーなどの「インフラ事業」と、電子部品などの「デバイス事業」を本体から切り離して上場させる。本体はグループの資産管理会社となる。非効率な事業も抱える複合企業の弊害を排し、事業を絞ることで効率的な経営を目指す。

すでに東芝は、医療機器や半導体メモリーなどの成長事業を売却済みだ。そうした中で今回の会社分割は「物言う株主」の海外ファンドが強く要求していた。これで株主価値は上がっても、企業価値を高めるための道筋は見えない。経営陣は分割後の成長の道筋を明確に示してもらいたい。

会計不正や米原発事業の巨額赤字など、経営は迷走を続けている。今春には車谷暢昭前社長が関係していた英投資ファンドが株式公開買い付け(TOB)を表明したが、社長辞任に伴って宙に浮いた。車谷氏は昨年の株主総会で、株主の権利行使に主体的に介入したことも判明している。

こうした事態を招いたのは企業統治が機能せず、経営陣の暴走を止められなかったのが要因だ。東芝は日本企業の中でいち早く指名委員会等設置会社に移行し、社外取締役に監督権限を持たせるなどの経営改革に取り組んだ。だが、企業形態を変えるだけでは企業統治の強化につながらなかった。

綱川智社長は記者会見で、会社分割について「解体ではなく進化だ」と強調し、企業価値の向上に自信を示した。ただ、同社が向き合うのは株主だけではなく、従業員を含めたすべての利害関係者であることを忘れてはならない。