今年初めて贈呈式が一般公開された、ミステリー作家の登竜門である江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)。抽選で選ばれた約150人のファンも見守った贈呈式で、印象深かったのが同協会代表理事である京極夏彦さんら人気作家たちが賞選考の舞台裏を語り合ったトークショーだった。現役作家の率直な発言や出版関係者の声からは、数多くの才能を世に送り出してきた賞の伝統と権威、そして時代の流れによる位置づけの変化が見えてくる。
落選歴を「告白」
「調べてみたら、(昭和58年の)第29回の乱歩賞でした。(デビュー作となった)『十角館の殺人』のプロトタイプ(原型)となる作品を、大学生のころに応募しました。7割方は現在の作品と同じなんです。それは、2次選考で落ちまして…」