鑑賞眼

「赤坂大歌舞伎」が一区切り  鶴瓶の新作落語が名作歌舞伎に 

新作歌舞伎「廓噺山名屋浦里」(C)松竹
新作歌舞伎「廓噺山名屋浦里」(C)松竹

十八代目中村勘三郎の「芸能の街、赤坂で歌舞伎を」というひと言から平成20年にスタートした「赤坂大歌舞伎」。25年からは中村勘九郎、七之助兄弟が亡き父の遺志を継いで公演を続けてきた。

6回目となる今回上演されている「廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらざと)」は、笑福亭鶴瓶が27年に披露した新作落語「山名屋浦里」が基になっている。

この新作落語は元々、お笑いタレントのタモリがテレビ番組の収録のために訪れた吉原で聞いた花魁(おいらん)の実話がおもしろかったため、鶴瓶に「落語にしたら」と勧めたのが始まり。

新作落語を聞いた勘九郎がぜひ歌舞伎にしたいと鶴瓶に直談判し、翌28年に新作歌舞伎として歌舞伎座で初演された。新作歌舞伎の方も好評を博し、歌舞伎では珍しく千穐楽にはカーテンコールも起きたほどだったという。

「廓噺山名屋浦里」は江戸時代の吉原を舞台に、田舎侍(勘九郎)と吉原一の花魁、浦里太夫(七之助)が織りなす人情噺。ストーリー展開はシンプルながら、ほろりとさせる場面が随所に盛り込まれ、〝世話物〟の世界観が繰り広げられる。

田舎侍の堅物ぶりを時にコミカルに演じていた勘九郎に、亡父の姿が重なる。美しく気高い花魁から一転して、「~ずら」とお国言葉で身の上を語るときに見せる純朴な女の顔。これを演じ分けた七之助は進化し続ける女形だ。

この兄弟は互いの良さを引き立て合い、いつも心地良い〝和音〟を響かせる。記者会見でも2人の弟思い、兄思いが何となく伝わってきてほのぼのする。個人的には大好きな歌舞伎役者さんたちだ。