先週、台湾は民國110年(西暦2021年)版「國防報告書」を発表した。産経新聞は、「中国『グレーゾーン作戦』の脅威高まる」との見出しで、中国が「情報戦、心理戦など武力攻撃ではない手法で台湾にダメージを与え」つつあると報じている。最近巷では「台湾有事」に関する議論が盛んだが、その台湾は自らの防衛を如何(いか)に考えているのだろうか。
公開情報を丁寧に読む
台湾に限らず、およそ海外情勢分析の基本は公開文書の熟読だ。27年間の外務省勤務での結論は、「〇〇情報筋の話」や「大統領側近からの情報」のみに基づく分析の多くが「間違い」だったこと。欧米諜報機関の優秀なアナリストはおしなべて各国の公開情報を長年精読している。以下の分析も公開情報に基づくものだ。
「國防報告書」の変化
台湾が初の「國防報告書」を発表したのは1992年、今回で16回目となる。初回は「不安定要因は中共(中国共産党の支配領域)と北韓(北朝鮮)であり、中共三軍は全力で軍の現代化を推進中」と分析していた地域安保情勢も、今回は「その中核は、米国と中華人民共和国間の戦略的競争と、中国の総合的国力を梃子(てこ)とした地域での地政学的影響力の拡大」だと論じている。