豪州、台湾有事なら米国支援 中国を牽制

オーストラリアのアボット元首相(ロイター)
オーストラリアのアボット元首相(ロイター)

【シンガポール=森浩】オーストラリアが台湾有事の際、米国と共同歩調をとる姿勢を示した。豪州は米英と安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設するなど、中国を念頭にインド太平洋地域の安定に関与する姿勢を強めている。国内には対中融和論もある中、台湾への軍事行動を座視しない姿勢を鮮明にし、中国の動きを牽制(けんせい)した形だ。

ダットン国防相は12日付の地元紙オーストラリアン(電子版)のインタビューで、米国が台湾防衛のために軍を投入した場合、同盟国である豪州がその軍事行動に参加しないことは「考えられない」と述べた。「高いレベルの準備と、より大きな抑止力を確保する必要がある」とも話し、中国への対抗を念頭に軍備増強を進める意向も示した。

ダットン氏の発言は、中国に融和的なキーティング元首相の発言に反応したものだ。キーティング氏は10日、台湾問題は「豪州の重要な関心事ではない」と述べた上で、米中が台湾をめぐって戦争になっても豪州に参加する義務はないと述べていた。

ダットン氏はモリソン首相率いる自由党の保守グループの中心的人物で、これまでも対中警戒論を発信してきた。地元紙シドニー・モーニング・ヘラルド(電子版)は「ダットン氏は(台湾有事という)最悪の事態に備えるために議論を進めたい考えだ。発言の重みは大きい」と指摘した。

豪州は新型コロナウイルスの発生起源について独立機関による調査を要求したことを契機に中国との関係が冷え込む一方、同じ民主主義の価値観を共有する台湾との連携強化を図っている。

10月にはアボット元首相が台湾を訪問し、蔡英文総統と面会した。豪州メディアによると、アボット氏訪台は中国を刺激するため、政権内からも異論が出たというが、モリソン氏は外交関係のない台湾との連携を強めるために黙認した。

ダットン氏の発言について、中国共産党系メディア「環球時報」の胡錫進編集長はツイッターで「豪州が台湾海峡で戦うことになれば、中国が激しい攻撃を加えるだろう。豪州は台湾と米国のために犠牲になる覚悟をした方がいい」と強く反発した。

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