コロナ規制で悩む英政権 撤廃継続か復活か

ロンドンで新型コロナ流行下に駅のホームを歩く人々(ロイター=共同)
ロンドンで新型コロナ流行下に駅のホームを歩く人々(ロイター=共同)

【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルス対策の行動規制を主要地域で撤廃した英国が、新規感染者数の増加を受け、規制を再導入すべきか否かで揺れている。医療体制の逼迫(ひっぱく)を防ぐために規制が必要だとする声が専門家から上がる一方、規制再導入は景気回復の重しとなることが懸念されている。「ウイルスとの共生」を掲げるジョンソン政権は、現在進めている3回目のワクチン接種の効果を見極めた上で判断したい考えだ。

英政府は7月19日、人口の大半を占めるイングランドについて、店舗でのマスク着用義務や他人との距離を確保するルールなどを撤廃し、在宅勤務の奨励もやめた。英国での1日当たりの新規感染者数は8月上旬に2万人程度だったが、イングランドで学校が再開した9月以降に増加。11月からは4万人前後で高止まりしており、ジャビド保健相は「今冬に10万人に達する恐れがある」と指摘する。

こうした中、英政府のバランス首席科学顧問は、行動規制の再導入に向けた準備を進めるよう政府に訴えた。11月以降、新型コロナによる1日当たりの新規入院患者が千人以上、死者が200人に達することもあり、医療現場への負担が大きいことが背景にある。イングランドとは対照的に、行動規制を継続してきた北部スコットランドでは、9~10月にかけて1日当たりの感染者数が急減している。

だが、ジョンソン首相は今月15日、「現時点で(マスク着用の義務化などを)実施する必要はない」と表明。規制再導入の代わりに、9月から50歳以上について行っているワクチン3回目接種の対象を40歳以上に拡大する計画を発表した。英政府によれば、3回目接種で感染による発症を防ぐ効果は90%以上になるといい、ジョンソン氏は当面、接種の拡大で感染者増に対応する考えだ。

英政府は、規制再導入が景気回復の腰を折ることを警戒している。米政治専門紙ポリティコが入手した英政府の文書などによると、マスク着用の義務化や在宅勤務の奨励といった規制を行えば、店舗への客足が遠のくといった理由から英経済に約5カ月間で最大180億ポンド(約2兆7千億円)の損害が生じる可能性があるという。