コロナ その時、

(35)2021年5月1日~ 大規模接種が開始、予約殺到

新型コロナウイルス禍で迎えた2年目の大型連休―。政府の自粛要請にもかかわらず各地の人出は急増し、国民の我慢の限界が露呈した。期待を集めたのがワクチンだった。菅義偉(すが・よしひで)首相は「1日100万回」の接種を掲げ、24日には東京、大阪に自衛隊運営の大規模接種センターがオープン。予約はたちまち埋まった。

東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に対し、4月25日に発令された緊急事態宣言。5月に入ると、新型コロナウイルスの「第4波」はいよいよ切迫してきた。感染力の強い英国株が広がり、厚生労働省は2日、重症者が1日時点で過去最多の1050人になったと発表した。

大型連休期間の全国の観光地の人出は前年に比べて江の島(神奈川)で5倍超、上高地(長野)で10倍超に増加。菅義偉(すが・よしひで)首相の国民への「自粛」呼びかけは響かなかった。政府は大型連休明けに、11日が期限だった東京など4都府県への緊急事態宣言を31日まで延長することを決定し、新たに愛知、福岡両県も追加。16日からは北海道、岡山、広島も加わった。

五輪への風当たりきつく

政府が望みをかけたのはワクチンだ。菅首相は7日の記者会見で「1日100万回」のワクチン接種を目標にすると表明。24日には防衛省が東京、大阪に大規模接種センターを開設する。予約受け付けが始まった17日、大阪会場では開始25分で枠が埋まった。

7月開幕の東京五輪への世論の風当たりは、強くなる一方だった。国際オリンピック委員会(IOC)は6日、選手団に米ファイザー社がワクチンを無償提供すると発表する。

学生街を抱えるJR高田馬場駅(東京都新宿区)では19日、駅前の広場をフェンスで封鎖した。飲食店の時短営業が続く中、学生ら若い世代を中心に「路上飲み」が横行し、区が封鎖に踏み切ったものだ。

病床や人材の不足が指摘されていた医療体制の構築はこの間もなかなか進まず、28日には、月末が期限だった9都道府県への緊急事態宣言を6月20日まで延長することが決まる。政府の対応は泥縄式との批判も高まり、菅政権の体力はじわじわと奪われていく。

疲弊する旅行・航空業界

経済の体力も同様だ。旅行大手のJTBが28日に発表した令和3年3月期連結決算は、最終損益が1051億円と過去最大の赤字に。日本航空も最終損益が2866億円の赤字で、通期赤字は平成24年の再上場後初めてだった。ANAホールディングスも過去最悪の4046億円の巨額損失を計上。トヨタ自動車は18日、世界的な半導体不足で国内2工場の稼働を6月に数日間停止すると発表。トヨタですら回避できないほど世界のサプライチェーンにゆがみが生じていた。

一方、主要国の金融緩和を受けた世界的な株高の追い風で、ソフトバンクグループは3年3月期の連結最終利益が4兆9879億円となり、日本企業の歴代最高を更新。業種による明暗は明らかだった。

出口探る欧州、インドは深刻

感染状況にも経済にも焦燥感の募る日本。一方、欧州ではワクチン接種の進行とともに流行の和らぎが見えてきていた。

1日の感染者数が4月には3万人を超えていたフランスでは、5月に入るとおおむね1万人台に減少。同月末までにワクチンを1回以上接種した人は約38%に達した。仏政府は3月後半から順次全国で導入した日中の外出規制を解除。5月19日にはカフェやレストランの営業を半年以上ぶりに認めた。同じく接種の進む英国のジョンソン首相は10日、飲食店の屋内営業や映画館などを17日から再開すると発表。ドイツの首都ベルリンでは21日、飲食店の屋外での営業が約半年ぶりに再開された。

ワクチンで「出口」を探り始めた先進各国の一方で、インドでは世界最悪のペースで感染が拡大。18日に累計感染者が2500万人を突破、24日には累計死者が30万人を超えた。その落差は明らかだった。

世界保健機関(WHO)は31日、ウイルスの変異株の名称について「α(アルファ)」や「β(ベータ)」などギリシャ文字のアルファベットを使うことを発表。最初にウイルスが確認された国名を冠して「英国株」「インド株」などと表記されてきたが、国名による偏見を回避するためだ。米国では20日、新型コロナが中国から拡大したことを受けてアジア系への暴力や差別が増加していることに対応し、アジア系住民への憎悪犯罪(ヘイトクライム)対策法が成立した。

【コロナ その時、】(34)2021年4月1日~ 高齢者に接種開始 初の蔓延防止措置