元カープ選手が挑む障害者野球全国大会

元プロ野球広島の山中達也さん。障害者野球チーム「香川チャレンジャーズ」を支えている。
元プロ野球広島の山中達也さん。障害者野球チーム「香川チャレンジャーズ」を支えている。

首の骨を折り、右半身にまひが残った元プロ野球広島の選手、山中達也さん(32)らが障害者野球チーム「香川チャレンジャーズ」を発足させ、初めての交流大会に臨んだ。新型コロナウイルス禍の影響で、チーム結成半年で初めての対外試合。初戦は徳島ウイングスと対戦し接戦の末、4対4の引き分け。愛媛ブレイド・高知ニューフレンズの合同チームとの2戦目は6対7で惜敗した。今後は全国大会も目指したいという山中さんは「野球をやりたいと集まってくる障害者の思いに応えたい。障害者野球を通じて、いろんな野球の形を作っていきたい」と話している。

打席に入った徳島の車いす選手。守備では捕手をつとめた
打席に入った徳島の車いす選手。守備では捕手をつとめた

代表は元育成選手

山中さんはチームの代表で設立呼びかけ人の一人。小学2年で野球を始め、平成18年ドラフト育成1位で広島カープ入団。多彩な変化球を武器にする技巧派左腕だったが支配下選手登録を勝ち取れず22年に戦力外通告を受けた。プロ復帰を目指し独立リーグの香川に入団した翌年の8月、海水浴中に首の骨を粉砕骨折。右半身にまひが残った。今は、丸亀市体育協会の職員として働いている。

徳島ウイングスの練習を見学したことがきっかけになり、香川県初の障害者野球チームの発足に向けて奔走。チームには、上下肢が不自由な人・知的障害者26人を含む約40人が所属している。練習は週1回で、対外試合に備えてきた。

障害者野球のルールの一つ、打者代走。左下の選手が打者の代わりに走者となる
障害者野球のルールの一つ、打者代走。左下の選手が打者の代わりに走者となる

特別ルールも

丸亀市内で開かれた交流大会はチャレンジャーズ、徳島ウイングス、愛媛ブレイド・高知ニューフレンズ合同の3チームで90分打ち切り制の総当たり戦。

大会では障害者野球ならではの特別ルールがある。バントや盗塁、振り逃げは禁止、投球を捕手が触れば後逸扱いにならない▽走るのが難しい選手には打者代走が使える-など。

車いすの捕手が出場したり片腕しかない選手が巧みにバットを操って打ったり懸命のプレーに試合は白熱。両脚に人工関節が入っているという岡田秀夫選手(69)は「杖をついて100歩がやっとだったが約10年前に手術し動けるようになったので参加した。体が動くうちは続けたい」と話す。

4番で捕手の平川亘紀選手(26)は高校、社会人とバレーボール選手だったが21歳で交通事故に遭い首を骨折、寝たきりは免れたが左半身にまひが残る。仲間に誘われて一緒に野球を始めた。捕手歴は約1年。左手が不自由だが「キャッチングがもっとうまくなりたい」と、向上心を見せた。

香川県初の障害者野球チーム「チャレンジャーズ」。初の対外試合でいきいきとプレーした
香川県初の障害者野球チーム「チャレンジャーズ」。初の対外試合でいきいきとプレーした

チームが進む道

体の機能的にノックやキャッチボールが難しい選手も少なくない。

土居正信監督(66)は「勝敗を優先すれば技術があって体が動く選手の起用が多くなることもある」と複雑な胸中を語るが、「打席でのうれしそうな表情を見れば彼らにも試合の喜びを味わせてあげたい」とも。

自身も小児性まひで右腕に障害が残る土居監督は「選手によって障害の程度もいきさつも異なる。勝つのも使命だが、野球を楽しみたい、知りたいという目的の人もいる。障害のあるジュニア選手の育成にも取り組みたい。このチームは両方の使命を追い求めていくチャレンジャーだ」と話していた。

裏方としてチームを支える山中さんは「引退を決断したときに自分の野球の目的は区切りをつけた。見ていると、うずうずしてくる部分もあるがみんなの頑張りを純粋に応援したい」として練習の計画やサポート、練習場所の確保、対外試合の交渉など、支える立場に徹している。障害者手帳を取得しておらず現状では選手としては出場できない。

ピンチを迎え、マウンドに集まる香川チャレンジャーズの選手
ピンチを迎え、マウンドに集まる香川チャレンジャーズの選手

土居監督は「ぼくらの知らない扉の向こうを知っている。軸になる選手があと1人いればチームはガラリと変わる。今の立場でもいいが、できれば選手の立場でみんなにそれを伝え、支えて応援することもできるはずだ」と、山中さんがグラウンドで活躍することを望んでいるという。

チームは来年1月、日本身体障害者野球連盟に登録する予定だ。連盟には37チームが加盟し、毎年春と秋に全国大会を開催。登録初年度は春の全国大会に普及枠として出場優先候補となる。

交流試合の終了後には手話者を交えてチームミーティング。全国大会に向けて今後の練習方針などが伝えられた。

チームの目標はまずは「全国大会1勝」。土居監督は「誰かができなければカバーし合い、それを見てみんなが支え合っていくのがうちの姿。選手の夢や希望を少しでもかなえられるようにしたい」と話していた。(和田基宏)