中米ホンジュラス大統領選で波紋 有力候補が中国重視

9月5日、ホンジュラスの首都テグシガルパで演説するシオマラ・カストロ氏(ロイター)
9月5日、ホンジュラスの首都テグシガルパで演説するシオマラ・カストロ氏(ロイター)

【ニューヨーク=平田雄介】台湾と外交関係を持つ中米ホンジュラスの大統領選(28日投開票)で、「中国と外交・通商関係を結ぶ」と訴えた野党候補が世論調査で首位に立ち、波紋を広げている。中台を不可分の領土だとする中国との国交樹立は台湾との断交を意味する。中国の孤立化工作で外交関係を維持する国が15カ国にとどまる台湾は、ホンジュラス引き留めに躍起になっている。

台湾の蔡英文(さい・えいぶん)総統は13日、ホンジュラスとの外交関係が80年を迎えたことを祝してエルナンデス大統領を総統府に招き、一層の関係強化を確認した。

しかし、ホンジュラスでは中国との関係を重視する野党リブレのシオマラ・カストロ氏(62)が10月の民間世論調査で支持率38%と首位に立つ。当初は来年1月に任期満了となるエルナンデス氏の後継として、与党・国民党が擁立した首都テグシガルパ市長のナスリ・アスフラ氏(63)が優勢だった。別の野党を率いるテレビ司会者が10月に選挙戦撤退とカストロ氏支援を表明し、野党連合ができたことで情勢が一変。アスフラ氏が支持率21%で追う事実上の一騎打ちとなっている。

11月7日、ホンジュラスの首都テグシガルパで演説するナスリ・アスフラ氏(ロイター)
11月7日、ホンジュラスの首都テグシガルパで演説するナスリ・アスフラ氏(ロイター)

ホンジュラスでは昨年、新型コロナウイルスや2度のハリケーン被害で、経済成長率がマイナス9%を記録。投票時に失業問題を重視する人は7割、貧困を問題視する人は5割に上る。カストロ氏の訴えの中心は「貧困と格差の是正」で、6月に中国重視の姿勢を打ち出したのも、自国を「世界で最も成長している市場に組み込む」ためだ。

カストロ氏は野党連合結成後、中国との国交樹立について明言していないが、中国は9月、「『一つの中国』原則を支持する全ての動きを歓迎する」(汪文斌(おう・ぶんひん)外務省報道官)と好意的に受け止めている。

中国は、「独立派」とみなす蔡氏が台湾総統に就いた2016年以降、インフラ建設など経済支援を武器に台湾と外交関係を保つ国々を切り崩す動きが目立つ。中米・カリブ海では17年にパナマ、18年にエルサルバドルとドミニカ共和国がそれぞれ台湾と断交し中国と国交を樹立した。

今年は、これらの国々に新型コロナの中国製ワクチンが供給される一方、5月にホンジュラス、同じく台湾との外交関係を維持するグアテマラでのワクチン不足が伝えられた。切羽詰まったエルナンデス氏は中国製ワクチン入手に向け「必要なら中国で通商代表事務所を開設する」と演説。支援に回すワクチンのなかった台湾は窮地に陥った。

米国はワクチン外交をしないとしながらも、ホンジュラスやグアテマラにワクチンを分配し、台湾を側面支援。6月以降、ホンジュラスに計387万回分、グアテマラに計450万回分提供し、現地の状況は大幅に改善したとされる。