from和歌山

水管橋崩落 行政の役割、理解していれば

「六十谷水管橋」で見つかった破断箇所=10月6日、和歌山市
「六十谷水管橋」で見つかった破断箇所=10月6日、和歌山市

望遠レンズが音を立ててピントを合わせる。崩落で紀の川以北が約1週間、断水した和歌山市の「六十谷(むそた)水管橋」。水管橋に並行する歩行者用の橋の上で狙ったのは、崩れ落ちた部分のひとつ北側だ。ファインダー越しに「つり材」の断裂が見え、隙間から青い空がのぞいた。詳しい原因は分かっていないが、「どうして、気づかなかったのか」と感じていた。

崩落翌日の10月4日午後、給水所のひとつとなった和歌山市立野崎小を取材した。知人から借りたポリタンクに水を入れた40代の主婦は「お手洗いの水を確保するのが一番大変です」と話してくれた。さらに「昨日、市内のスーパー銭湯には行列ができていたと知人に聞きましたし、『今日のお風呂はどうしようか』という思い」。食事は断水の影響のない地域に行き、外食で対応するという。

そのうえで「市に対しては腹立たしい。『はこもの』ばかり造るのではなく、生活に直結するインフラをもっと丁寧に扱ってほしい」。ポリタンクは15リットル入り。重さは相当な負担になるはずだ。

ポリタンクが自宅にないため約1時間並び、約2リットル入りの容器1個分の水を手にした高齢の男性もいた。水が不可欠な、透析を受け持つ病院にも大きな影響を与えた。

紀の川以北の和歌山市民約13万8千人の水を水道管2本のみで支える。和歌山市はこの状況をどう捉えていたのか。「水管橋を増やす」「紀の川の北側に、昔あった浄水場を残しておく」…。インフラ整備の将来像はあっても全国の自治体同様、財政的に厳しい部分もあっただろう。だが、それ以前に検査体制ひとつをみても基本理念は守られていたのか。

定期検査は月1回、漏水の有無を調べるのが主な目的。担当者が目視で確認する程度で双眼鏡なども使っていなかった。

15年以上前、市町村合併で全国が揺れる際に取材した中国地方のある町長は、将来のビジョンをこう語っていた。「行政の役割は住民の命と財産を守ること」。そのうえで「新幹線が通っていなくてもいい。普通に生きて子供を育て、そして普通に老いていける。そんなまちを作りたい」。

「普通の生活」が守られない状況になった今回の事態。和歌山市が行政の役割を理解し、真摯(しんし)に職務に取り組んでいれば、防ぐことは決して不可能ではなかったはずだ。

(藤崎真生)