「棄権→賛成」は適法?関西スーパー総会報告書

エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングと首都圏地盤のスーパー、オーケー(横浜市)による関西スーパーマーケットの争奪戦が再燃している。オーケーは17日、統合手続きの差し止めを求める仮処分申請が認められた場合、関西スーパーに対し、再びTOB(株式公開買い付け)を提案すると発表。法廷では関西スーパーの臨時株主総会で、特定の株主の投票を棄権から賛成に切り替えたことが適切だったかが焦点となりそうだ。

オーケーは10月29日の関西スーパーの臨時株主総会の集計作業に「疑義が生じた」として、今月9日に神戸地裁へ仮処分を申請。総会には裁判所が選んだ弁護士が検査役として立ち会い、集計に通例とは異なる経過があったとして裁判所に報告書を提出していた。

総会の投票は午後1時40分ごろ開始。議長を務める関西スーパーの福谷耕治社長は「マークシートに記入のない投票用紙を提出した場合、棄権として扱う」「棄権は事実上、反対と同じ効果を持つ」と繰り返し注意喚起した。

関西スーパーの臨時株主総会の会場に向かう株主ら=10月29日、兵庫県伊丹市 (前川純一郎撮影)
関西スーパーの臨時株主総会の会場に向かう株主ら=10月29日、兵庫県伊丹市 (前川純一郎撮影)

産経新聞の入手した報告書によると、検査役は2時57分ごろ、可決に必要な3分の2へ届かない65・71%との集計結果を受け取った。総会は3時に再開予定だったが、関西スーパーは「僅差であり集計に慎重を期す」との理由で4時まで延長した。

3時半ごろ、もともと賛成のつもりだったとするある株主(企業)からの出席者が、「白紙で出しているが、取り扱いがどうなっているのか」と受付担当者に確認。関西スーパー側は検査役に同45分ごろ、この株主の白票を棄権でなく賛成として扱うと説明し、再集計の結果、統合案は66・68%で可決された。

企業法務に詳しい早川明伸弁護士は「(裁判では)再集計が『著しく不公正』な決議方法に該当するかどうかが焦点となるのではないか」と指摘。票の扱いの切り替えについては「(白票を投じた)株主の意見をくむことが不公正かどうかの判断になる」と話す。

この株主は、企業として事前に賛成の議決権行使書を送付。会場での投票時は、出席者が担当者に「事前行使しているので、白票のまま入れる」と話していた。総会後には「事前に集計されているので、賛否を記入しなくてもいいという先入観があった」などと説明したという。

一連の経緯を踏まえ「棄権とすべきだった」と考えるのは株主総会に精通する久保利英明弁護士だ。

「集計完了により議場は開放され、投票行動はできなくなる。その時点で『白票=棄権票』であった議決を賛成票に変更することはできず、一方的に変更したとすれば不適法と言わざるをえない」と指摘。その上で、「総会でのルールについて主宰者である法人からアナウンスがあったのであれば、棄権としてカウントすべきだった」とした。

これに対し、TH総合法律事務所の中村芳生弁護士は「賛成」とした判断に理解を示す。「投票集計のルールはきっちりと決まっていない。不当な圧力があったなら別だが株主は一貫して賛成の真意を示しており(対応は)それを尊重したものだ」。

統合は12月1日に実施予定。裁判所での事実認定に時間がかかるとの見方もあるが、企業法務に詳しい牛島信弁護士は「経験上、裁判所は12月1日を重視してそれまでに判断を出すのでは。株主の賛成の意思表示を押しのける判断は躊躇するだろう」と推測する。

オーケーは仮処分申請が認められれば、関西スーパーに対し、完全子会社化を目的に、1株2250円でのTOBを提案すると表明した。認められなければ提案せず、関西スーパーの株式を売却し買収合戦から撤退する。


会員限定記事会員サービス詳細