社説検証

岸田政権と中国 産読「人権に一層厳しく」 毎日は対話へ努力求める

中国共産党の6中総会に臨む習近平氏(中央)ら=北京(新華社=共同)
中国共産党の6中総会に臨む習近平氏(中央)ら=北京(新華社=共同)

第2次岸田文雄内閣が10日に発足した。自民党の総裁選や衆院の解散・総選挙での論戦を通じ、中国の覇権主義をいかに抑止するかが、新政権の重要課題であるとの認識がおおむね共有され、第2次岸田内閣発足に際しても、新型コロナウイルスの「第6波」への備えなどと並び、対中政策での注文が相次いだ。

産経は、外交・安全保障でも政策実施にスピード感を求め、岸田首相は、早期の訪米実現でバイデン米大統領と会談し、対中戦略をすり合わせるべきだと説いた。中国抑止には、同盟国米国のほか、オーストラリアや英国など有志国との協力も欠かせない。中国が人権弾圧を繰り返し、尖閣諸島(沖縄県)の奪取を狙っていることを踏まえ、「岸田政権は、習近平国家主席の国賓来日を白紙撤回しなければならない」と断じた。

外交努力に加え、防衛力や海上保安能力の強化も大切だとし、「岸田首相は経済安全保障を推進するとともに、敵基地攻撃能力の導入や防衛費の思い切った増額を決断し、国民を守る抑止力を高めねばならない」と強調した。

これに対し毎日は、岸田首相の対中政策の方向性は、防衛費の増額や経済安全保障の重視など、「対抗」に偏っているように見えるとし、「『対抗』と『協力』のバランスを取ることが求められている。米国でさえ、台湾問題でつばぜり合いを繰り広げながら、中国との対話のチャンネルを確保している。日本が対抗一辺倒では、情勢の変化に対応できず、不利な立場に追い込まれかねない」と危惧を表明し、岸田政権に「対話」への努力を求めた。

第2次岸田内閣の新たな顔ぶれは、自民党幹事長となった茂木敏充外相の後任として起用された林芳正外相のみだ。林氏は日中友好議員連盟の会長職にあった。また、組閣にあわせて、人権問題担当の首相補佐官が新設され、中谷元・元防衛相が就任した。ともに、対中政策でキーマンとなることが期待されている。読売は「林、中谷両氏は連携し、東シナ海での現状変更や、香港や新疆ウイグル自治区などでの人権侵害は容認しないという日本の立場を明確に伝え、中国に具体的な対応を求めていくべきだ」と論じた。

今年3月、ウイグル人への弾圧をめぐり、米英、カナダ、欧州連合(EU)が対中制裁を科した際、日本は、外為法に人権問題のみを理由とした規定がないことから、制裁を見送った。産経は「日本も人権侵害制裁法を制定し、人権を重視する国々の列に加わるべきだ。これらの政策を速やかに実行するため、中谷氏には働き抜いてほしい」と訴えた。一方、朝日は「人権侵害は中国の香港や新疆ウイグル自治区のみの問題ではない。中国を牽制(けんせい)するためだけの存在であってはならない」と、中国への配慮を見せた。

中国共産党の重要会議である中央委員会第6回総会(6中総会)が8~11日、開催され、党創建100年を総括する「歴史決議」を採択し、習近平総書記(国家主席)の功績を称賛した。習氏が来年後半の党大会を経て、総書記として異例の3期目に入ることが確実となった。

「少なくても今後1年は、政治を優先した『鶴の一声』による政策変更がありうる。海外の投資家、企業としては、説明抜きに打ち出される中国の政策リスクに敏感にならざるをえない」(日経)など、習氏の権威強化を各紙は警戒感を込めて論評した。

中国による力ずくの海洋進出はやまず、北朝鮮は核・ミサイル開発を加速させている。日本を取り巻く安全保障環境はかつてなく厳しい。岸田政権は全力を挙げ、この難局を乗り切ってもらいたい。(内畠嗣雅)

■第2次岸田内閣発足をめぐる主な社説

【産経】

・(人権担当補佐官)名前だけに終わらせるな(9日付)

・外交安保もスピード感で(11日付)

【朝日】

・負託に応え政策実現を(11日付)

【毎日】

・不信感拭う対話の努力を(8日付)

・自立と実行力が問われる(11日付)

【読売】

・実行力と発信力を内外に示せ(11日付)

【日経】

・首相は指導力発揮し難題に取り組め(11日付)

・習近平氏への集権が生むリスクに警戒を(12日付)

【東京】

・民主主義再生してこそ(11日付)