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「知徳体」育む環境と指導力 論説副委員長・沢辺隆雄

真夏日、小学校の校庭でマスクを外して体育の授業を受ける児童ら=東京都荒川区(松井英幸撮影)
真夏日、小学校の校庭でマスクを外して体育の授業を受ける児童ら=東京都荒川区(松井英幸撮影)

以前、まわりには阪神ファンが多いと書いたが、似非(えせ)ファンと真のファンに分かれるようだ。今週末からプロ野球の日本シリーズが始まるが、セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで阪神が巨人に敗れた翌日、自称・阪神ファンは「やっぱりダメだったな」と嘆いた。それを聞いた根っからの阪神ファンの先輩は「真の阪神ファンなら、この節目にまず今年の阪神の健闘をたたえるべきだ」と嘆いていた。

職場でプロ野球を語るこんな光景が、なくなるかもしれない。

同僚の運動担当記者らが書いた『スポーツをしない子どもたち』(田中充・森田景史著、扶桑社新書)は、コロナ禍の影響や体力低下、野球離れなど、z今夏開催された東京五輪の陰で忍び寄る危機を描いている。学校現場の指導者らにも丹念に取材し、教育問題の担当者としても学ぶところが多い。

例えば9歳から12歳、小学3年から6年にあたる頃は「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、見た動作を即座に覚え、大人になってからもその動作を忘れない―運動能力習得に重要な時期だと教えてくれる。3~8歳のころも大切で、鬼ごっこなど外遊びを通して運動神経が育まれるとも。

その頃は、親やまわりの人たちが、運動能力の向上について褒めることもカギで、褒められた子は褒められなかった子より、翌日の運動能力が2割程度上がる研究結果もあるというから驚きだ。

ほかにも「だるまさんが転んだ」という昔ながらの遊びで、鬼が振り向いたとき、急に止まれず転んでしまう子が目立つことなど、外遊びの体験が乏しい弊害が紹介されている。高校球児が最盛期より2割以上減少しているという野球離れも気がかりだ。

体を動かす喜びや、スポーツの魅力をいかに子供たちに伝えていくか、同書ではさまざまな取り組みを探っている。

子供たちがスポーツに親しむ環境とともに、「絶対大丈夫!」と励まし、支える指導者の育成も欠かせない。

教師ら教える指導者の側にも「勘のいい先生」「勘の悪い先生」がいると聞いたことがある。いつもと違う子供の様子を感じられるか。子供が悩みを打ち明けてきたとき、どんな言葉をかけるか。勘は教育現場で引き継がれた知識や経験に根差す。先を読んで手を打つ力も再認識したい。