【ワシントン=塩原永久】米中両首脳は15日のオンライン会談で、気候変動対策をはじめとする地球規模の課題で協力を深める必要性を確認するとみられる。米中は国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、地球温暖化対策を加速させる共同宣言を発表。台湾情勢や人権問題で対立を先鋭化させる一方、連携して取り組む一致点を探る外交努力を維持する構えだ。
米政府高官は、米中首脳会談を前にした14日の電話記者会見で、中国が気候変動対策などの世界的課題で「果敢な行動」を取ろうとしていると持ち上げた。
英北部グラスゴーでのCOP26の会期中、米中両政府が共同宣言をまとめ、気候変動対策で「重要な10年間」とする2020年代に行動を加速させると表明。連携を打ち出して関係国や国連首脳から歓迎された。
米政権は「利害が一致する領域」(高官)に、温暖化対策や新型コロナウイルス感染症などの公衆衛生対策を挙げる。激化する対立が世界的課題での協力に障害となるとの見方を「拒否する」(同)としている。
トランプ前米政権で米中対立の発火点となった貿易やハイテク問題でも、バイデン政権は、まずは交渉ベースで中国に是正を求めている。米通商代表部(USTR)が貿易協定の進展を点検する対中協議の再開に乗り出し、一方的な制裁関税の発動を多用したトランプ政権と一線を画した。
バイデン政権が一方的な強硬策に代わって重視するのが、同盟・友好国と連携した対中包囲網の強化だ。
中国が軍事的威圧を強める台湾海峡を含むアジア・太平洋地域をめぐっては、日本、オーストラリア、インドとの安全保障協力枠組み「クアッド」や、英豪との枠組み「AUKUS(オーカス)」の強化に注力。
産業基盤から軍事技術まで次世代競争力の鍵を握る半導体では、最先端製造技術を持つ台湾との関係を強化。戦略物資の供給網(サプライチェーン)を、日韓を含む「自由経済・民主主義陣営」と一体化させていく動きもみせている。
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席がオンラインで初めて顔を合わせる今回の会談は、両国が協力できる領域を模索する「大国間競争」外交の出発点となりそうだ。一方、習指導部は、台湾や南シナ海問題など「内政問題」とみる分野での譲歩拒否を貫いており、国際社会が期待する米中の歩み寄りに向けた外交努力には限界もある。