神戸市北区で平成29年7月、祖父母ら男女5人を殺傷したとして殺人や殺人未遂などの罪に問われ、1審神戸地裁の裁判員裁判で無罪判決を受けた男性被告(30)について、神戸地検は16日、判決を不服として控訴した。
1審判決によると、男性は29年7月16日朝、祖父母=いずれも当時(83)=と近所の女性=同(79)=を刺殺。母親(57)ら2人を金属バットなどで襲い、けがをさせた。
公判では男性の責任能力が主な争点となった。検察側は完全責任能力があれば死刑を選択すべき事案とした上で、男性は当時心神耗弱状態だったとして無期懲役を求刑。弁護側は心神喪失で無罪と主張していた。
4日の判決で飯島健太郎裁判長は「男性は妄想型失調症に罹患(りかん)しており、犯行は幻聴、妄想などに動機づけられた」とする医師の精神鑑定結果に基づき、「妄想を信じ切っていたか、そうでないとしても妄想への疑念はごく小さなものだった」と認定。犯行時は心神喪失状態だったという合理的疑いが残るとして無罪を言い渡していた。
神戸地検の山下裕之次席検事は「原判決には重大な事実誤認があることを理由に控訴した」とコメントした。