高齢化で「8050」から「9060」問題へ

不登校支援活動を行うNPO法人「高卒支援会」の教室=7月6日、東京都千代田区神田三崎町
不登校支援活動を行うNPO法人「高卒支援会」の教室=7月6日、東京都千代田区神田三崎町

高齢の親が長年引きこもる子供を支える「8050」問題と呼ばれる家族形態が親子の高齢化・長期化により、「9060」問題へと移行し始めている。新型コロナウイルス禍で、不登校の小中学生は過去最多の約19万6千人に上り、引きこもり予備軍拡大の懸念も高まっている。高齢化・長期化が進むほど、当事者との関わりが困難になる傾向も強く、支援者らが早期介入の必要性を訴えている。

「夜は眠れていますか」

「…」

「少しでもお声を聞かせていただけないですか」

「…」

東京都葛飾区にある自宅の部屋にこもった40代後半の男性は、区の高齢者相談センターの女性担当者がふすま越しに呼び掛けても押し黙ったままだった。

男性は80代の母親と50代の姉との3人暮らし。母親には認知症の症状があり、「弟が母親をたたいたり、『ばかやろう』と大声で怒鳴ったりする」と姉からケアマネジャーに相談。センターに高齢者虐待の疑いがあると連絡があった。

男性は不登校で高校を中退して以来、30年近く引きこもりを続けている。女性担当者は男性のもとを20回以上訪れ、支援の手をさしのべたが、男性は一言も発することがない。玄関前で鉢合わせしたときにも、無言で走り去られた。結局、母親は本人の希望で高齢者施設に入ったが、男性は支援につなげられていない。

高齢者相談センターでは介護や高齢者虐待などの相談を受ける中で、8050問題に直面することも少なくない。女性担当者は親が90代、子供が60代という9060問題への移行も実感しており、「高齢化するほどこだわりが強くなり、関わりが一層難しくなる」と重く受け止めている。認知症があり、寝たきり状態の90代の母親と引きこもりの70代の息子の家庭のケースでは、訪問入浴などで看護師らが出入りするのを息子が嫌がり「今日はそういう気分じゃないから帰ってくれ」と追い返され、母親に必要なサービスを行えなかったこともあったという。