法廷から

友人から一転…いびつな「主従関係」に 元経産官僚給付金詐欺

前途洋々だったはずの若きエリート官僚は、なぜ公金を詐取したのか-。国の新型コロナウイルス対策給付金をだまし取ったとして逮捕・起訴された元経済産業省キャリア官僚の男2人の公判が、東京地裁で開かれている。法廷では、ある出来事を契機に友人だった2人の間にいびつな「上下関係」が生まれ、上司と部下のように役割分担して不正受給に手を染めていった様子が浮かびあがった。

「証拠捏造」に失敗

詐欺罪に問われているのは元経産省産業資金課係長の桜井真被告(29)と元同省産業組織課職員の新井雄太郎被告(28)。

関係者や検察側の冒頭陳述によると、2人は神奈川県の私立高校の同級生。ともに慶応大経済学部に進み、桜井被告は卒業後、大手都銀をへて平成30年、経産省に入省した。新井被告は1年で中退後、東京大法学部、東大法科大学院に進み司法試験に合格。令和2年、経産省に入った。

高校時代は同じ部活動に所属し、進学や就職で悩む新井被告に、桜井被告が食事をおごったり励ますこともあったという。そんな関係が変化したのは、桜井被告が平成29年に知人と立ち上げたベンチャー企業をめぐる金銭トラブルがきっかけだった。

桜井被告は、恐喝を受けたとする噓の証拠をでっち上げ、知人に損害賠償請求訴訟を起こそうと計画。法律知識に長けた新井被告を「共犯」に引き込んだ。

知人側の人物と接触した新井被告は、真実を打ち明けた上で、法廷で噓の証言をするよう頼んだ。これが密かに録音されており、知人側は実際の訴訟で、録音データを提出。形勢が著しく不利になった桜井被告は「お前のせいで訴訟に負けそうだ」などと激高。何度も新井被告をののしり、新井被告も「負い目」を感じるようになったという。

「拝金主義だった」

その後、コロナ禍が広がると、桜井被告は、自身が主導し設立したペーパーカンパニー2社を使って家賃支援給付金や持続化給付金を不正受給しようと思いつき、新井被告に提出書類の偽造を指示。負い目のある新井被告は、唯々諾々と従った。2人の関係は、友人から「上司と部下」に変貌していた。

初公判で、2人はともに起訴内容を認めた。桜井被告は、検察側の冒頭陳述について「おおむね事実」とし、自身について「拝金主義に陥っていた」と打ち明けた。

関係者によると、桜井被告は10代のころから株取引をして多額の利益を出すなど、カネを稼ぐ才覚に恵まれていた。公判では、今回の事件の「舞台装置」となったペーパーカンパニーも、桜井被告が個人的な飲食代や遊興費を経費として処理し、税金の支払いを免れるためなどに使っていたことが明かされた。