評伝

日比野弘さん ラグビーへの深い情熱 冷静な口ぶりと熱い内面

日比野弘さん
日比野弘さん

実直で温厚。14日に亡くなったラグビーの元日本代表監督、日比野弘さんの人柄を尋ねると、誰もがそう口をそろえるだろう。

日比野さんのもとで日本代表主将を務め、1983年のウェールズ戦で24-29の接戦を演じた松尾雄治氏は「とても優しい方で、無性に一つ一つの言葉が心に響く監督だった」と振り返る。早大でも指導を受けた元日本代表の伊藤隆氏は「理論的に話し、冷静に指導されるタイプだった。気合とか根性とかはあまり口にしなかった」と語る。

もちろん内面には熱いものがあった。1980年代にも早大を率いた時期がある。早明戦では国立競技場が満員になった時代。試合前のグラウンドに客が乱入することもあった。警備担当者が捕まえて説諭したが、そんな迷惑な客にも「(試合を)見ていきなさい」と優しい声をかけたとの話が伝わる。

数年前、真否について、本人に尋ねたことがある。「そんなこともあったかもしれない。とにかく多くの人がラグビーを見に来てくれることがうれしかったから」と話してくれた。

日本協会会長代行などを歴任後も、競技人口やラグビー人気を気にかけていた。それだけに、国内のラグビー熱を一気に高めた2015年ワールドカップ(W杯)の南アフリカ戦勝利に「われわれも一生懸命(ラグビーの)露出を増やしたいと思ってやってきたが、一夜で変わった」と喜んでいたことが忘れられない。こよなく愛したラグビーと向き合い続けた生涯だった。(橋本謙太郎)