鉄道新潮流

ディーゼルを水素で走るエコ車両に JR東、年度内実証実験 CO2「実質ゼロ」へ前進

水素で走る試験車両「ひばり」のイメージ図。今年度内に営業路線での実証試験走行が始まる(JR東日本提供)
水素で走る試験車両「ひばり」のイメージ図。今年度内に営業路線での実証試験走行が始まる(JR東日本提供)

二酸化炭素(CO2)排出ゼロの水素で走る〝究極のエコ車両〟が、鉄道先進国の日本が送り出す次世代車両として関心が高まっている。JR東日本などは水素を活用する燃料電池を搭載したハイブリッド(複合化)車両の開発を進め、今年度内に営業路線で実証実験を始める。地方では依然として軽油を燃料とするディーゼル車が主役だが、将来的には全てのディーゼル車両がハイブリッド車両に置き換えられ、新たな生活の足として活躍する。

「目指すカーボンニュートラルとは、CO2を排出ゼロにするということ。鉄道の排出量はもともと少ないが、それでも先陣を切ってやらなければならない」

2050(令和32)年度の排出量「実質ゼロ」を目指すJR東の笠井浩司経営企画部次長は、そう力を込めた。

ローカル線に多いディーゼル車は軽油で走るとはいえ、全体からすれば運行本数や車両数は少ない。国内の元年度におけるCO2総排出量のうち、運輸部門は2割に満たない。その中で、鉄道部門は最も割合が低い3.8%だ。それでも、さらにその数字を「ゼロ」とするには、ハイブリッド車両が必要となる。

今回採用されるハイブリッドシステムは、燃料電池と一般的な蓄電池の両方からエネルギーを供給する。

HYBARI(ひばり)開発に向けた試作段階の水素貯蔵ユニット。内部に水素を注入するタンクが並んでいる(JR東日本提供)
HYBARI(ひばり)開発に向けた試作段階の水素貯蔵ユニット。内部に水素を注入するタンクが並んでいる(JR東日本提供)

設置された貯蔵タンクから水素が燃料電池に供給され、空気中の酸素と化学反応することで発電。蓄電池には燃料電池からの電力に加え、ブレーキ時に生じるエネルギーから変換した電力が充電される。双方の電池から電力供給を受けた電動機が車輪の制御を担う。

水素は車両センターなどで補給。ディーゼル車と同様、電車のような変電所や架線などが不要で沿線設備のスリムさを維持できる。

ただ、都市圏に多い平野部での大量輸送には、効率面などから電車の方が適しているといい、電車の運行を続ける方針だ。使用する電力を再生可能エネルギーから作り出すなどの取り組みを進め、電車も完全な脱炭素化を目指していく。

JR東は平成28年にハイブリッド車両の開発に着手し、日立製作所やトヨタ自動車などと連携してきた。近く完成する試験車両「HYBARI(ひばり)」の実証実験を鶴見線(神奈川県)などで終電後の夜間帯に実施し、実用化に向けたデータを収集する予定だ。

HYBARIの最高速度は時速100キロでディーゼル車とほぼ同じ。航続距離はディーゼル車の300~500キロに対し、140キロにとどまる。また、2両編成で水素の貯蔵タンクは、万が一の漏洩(ろうえい)時に外部へ拡散されやすいよう屋根に配置され、そのため車両の天井は若干低くなっている。

今後はタンクや車両床下の燃料電池のコンパクト化を進める一方、航続距離を伸ばすために水素をより多く搭載する方法などの検討が大きな課題となる。

水素で走る列車はドイツの一部路線で導入済みだ。日本は土地の狭さも影響して線路幅が狭い。笠井次長は「車両も欧州より小さい中で、いろいろな技術を積み込まなければならない」と難しさを語る。

営業運転は「2030年代の早いうち」を目指す。導入後は国内外でこのハイブリッド車両技術を広めたい考えだ。(福田涼太郎)

鉄道技術展の開催概要

▷開催期間:11月24日(水)~26日(金)。午前10時から午後5時まで。

▷場所:幕張メッセ(千葉市美浜区)

▷主催:産経新聞社

▷後援:国土交通省、経済産業省、文部科学省、千葉県、千葉市など

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