岸田文雄首相(自民党総裁)が党の衆院選公約で封印した「令和版所得倍増」に再び言及し始めている。元祖となる「所得倍増計画」は首相の出身派閥「宏池会」の創設者である池田勇人元首相が約13兆円だった実質国民総生産(GNP)を10年で2倍の約26兆円にする目標を掲げ、前倒しで達成したが、いまの低成長のままでは所得倍増を実現するのに単純計算で約77年かかる。首相は持続的な賃上げで所得向上を目指す構えを見せるが、達成への道のりは険しい。
「令和版所得倍増を目指して成長を実現し、その果実を国民一人一人に給与の引き上げという形で実感してもらう」。衆院選から一夜明けた1日の記者会見で首相はこう強調した。
首相は令和版所得倍増を9月の党総裁選段階から公約の柱の一つに据えてきた。しかし、閣内からも「なかなか令和の時代に所得を倍増するのは非現実的」(萩生田光一経済産業相)といった指摘が出され、衆院選を前にした初の所信表明演説では言及しなかった経緯がある。