福岡市の下水汚泥由来の「水素」耐久レースに

岡山国際サーキットでのスーパー耐久レースで走行する水素エンジン車=スーパー耐久機構(STO)提供
岡山国際サーキットでのスーパー耐久レースで走行する水素エンジン車=スーパー耐久機構(STO)提供

脱炭素社会の実現に向け、燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素は次世代エネルギーとして期待が高まっている。福岡市は「水素リーダー都市」を掲げ、下水汚泥を原料とした水素製造に取り組んでいるが、この福岡市内産をはじめ、九州由来の水素が自動車レースの水素エンジン車の燃料に採用された。水素の利活用に取り組む関係者にとって、追い風となる。

13日、岡山県の岡山国際サーキットで開かれた自動車レース「スーパー耐久シリーズ」第6戦で、トヨタのカローラスポーツをベースにした車両が軽快な走りを見せた。

この車両は水素を燃料にしている。ただ、空気中の酸素と化学反応させてつくった電気でモーターを回す燃料電池車(FCV)ではなく、ガソリン車と同様に内燃機関を持つ水素エンジン車だ。トヨタ自動車の豊田章男社長がオーナーを務める「ROOKIE Racing」が開発。豊田氏自身も「モリゾウ選手」としてハンドルを握る。

福岡市は今回、下水処理時に発生したガスを分離、処理して製造した水素15キロをサーキットに持ち込んだ。市は平成27年からこの水素を製造する事業に取り組み、プラントがある中部水処理センター(同市中央区)に併設した水素ステーションでは、これまで1688キロをFCVに供給していた。

高島宗一郎市長は15日の記者会見で「(水素を活用した社会づくりに向けた)技術的な蓄積を深めようとする大事な場で、福岡市の水素を使っていただき、大変光栄に思っている」と語った。

大都市特有の膨大な〝ゴミ〟から水素を取り出す福岡市の仕組みは、他にはない強みだが、今後の課題はプラントを稼働させる電力だ。岡山でのレースでは、福岡市内産のほか、ゼネコン大手、大林組の大分県九重町にある地熱発電所や、トヨタ自動車九州宮田工場(福岡県宮若市)内の太陽光発電パネル由来の電気を使って製造した水素などが用いられた。

再生可能エネルギーを用いた事例と異なり、福岡市の場合は、生産段階まで含めて二酸化炭素などの排出がない「クリーン水素」とは言えない。電源の調達方法などで今後、検討を進める見込みだ。

課題はあるが、福岡市内産の水素が自動車レースに採用された意義は大きい。それは単にモータースポーツとのつながりが生まれたことにとどまらない。エネルギーの脱炭素化が世界の潮流となる中、水素の活用ノウハウの蓄積は国際的な都市競争力の向上にもつながるからだ。高島氏も「水素はどういう部分が得意なのか。カーボンニュートラルに貢献していく上で知見を深めるきっかけになる。今後の街づくりにも生かしていく」と話している。(中村雅和)